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2014年度 教員のための金融教育セミナー

1.来賓講話/パネルディスカッション

(1) 来賓講話

「学校教育における金融教育について」
文部科学省初等中等教育局 教育課程課長 代理
太田 知啓 課長補佐

はじめに、日頃より金融教育の充実に取り組んでいただいていることに敬意を表したいと思います。 日本証券業協会が今春発表したアンケート調査では、多くの教員が金融経済教育の必要性を認識している半面、授業時間が足りないと感じたり、用語解説が中心で実生活との繋がりを感じにくいと感じていることが明らかになっています。

学習指導要領では、知識、技能の習得だけでなく、課題解決に必要な思考力、判断力、表現力、学習に取り組む態度をバランスよく育成することを目指しています。

学校教育において金融教育を充実するに当たり、限られた時間の中でどのようにして学習指導要領の目標や内容を実現するかがポイントだと思います。たとえば、中学校社会科(公民的分野)の教科書には、さまざまな金融機関や銀行窓口の業務が記述されていますが、授業でこれらを全て取り上げることは時間的にも困難です。学習指導要領が目指しているものは、金融機関の種類を理解させることではなく、金融などの仕組みや働きを理解させることを通して、現代社会についての見方や考え方の基礎を養うこととしています。学習指導要領の目標、内容に照らし、単元の目標や学習課題を何にするのか、どんな学習活動を行うか、教材、評価規準をどうするかといった点を、関係する教科等とも連携しながら、吟味、精選して授業を組み立てていただきたいと思います。

また、一方的な説明や体験のみに留まった授業ではなく、子どもたちに自ら考えさせたり、話し合いや発表をさせたりする時間を確保して、言語活動の充実を図ることも大切だと考えています。

最後に、金融広報中央委員会をはじめとする専門機関や各地の金融機関、地域、家庭との連携も重要です。保護者や地域に理解を深めていただくことや、講師として来ていただく方と指導内容や単元のねらいを共有し、先生方と外部の機関の方が一緒になって授業づくりをしていくことがますます大切になってくると思います。たとえば土曜日の学習活動などの機会を設けて、専門機関や金融機関等と連携して、社会全体で子どもたちへの金融教育が充実していくことも期待しています。本セミナーにご参加の先生方が各地域で発信元になり、優れた金融教育の実践が広まっていくことを期待しています。

来賓講話の模様

(2) パネルディスカッション

「学校における金融教育の実践に当たってのポイント」

パネリスト
大阪大学 社会経済研究所 教授  大竹 文雄 氏 
国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長 大杉 昭英 氏
小石川中等教育学校・上智大学 講師 新井 明 氏
帝京大学教職大学院  教授 小関 禮子 氏
コーディネーター
金融広報中央委員会 事務局長 丹治 芳樹

まず、教育現場において金融教育を効果的に実践するためにはどのような点に留意すればよいかを伺いました。新井氏は、「教員の金融教育への関心が高まっているというアンケート結果がある一方で、先生方が実際に学校で金融教育に取り組むには大変な思いをしなければならない部分があると思う。このパネルディスカッションを通してヒントを提起することができれば」と話されたうえで、金融教育実践の際のポイントとして、1.ボトムアップで自分から始める、2.取り組みやすいところから始める、3.広げる努力をする、4.全体を巻き込む、の4点とそれぞれのポイントについて述べられました。小関氏は、金融教育は生き方にかかわる教育でもあると述べられ、「周りの目や物や情報に惑わされない、主体的な判断のできる子どもたちを育てていく必要がある」と話されました。また、「子どもたちは、ものごとと自分の日々の生活とを関連付けたときに、一人一人がしっかりと考える。お金に関して子どもたちが陥りがちな問題を劇仕立てにして表現させる等、押しつけにならない、子どもたちに自ら気づかせるような進め方が大切だと思う」と述べられました。大竹氏は、行動経済学の観点から、「『生きる力』とは、自分で選び、決めたことを守り、実行していく力を身につけること。人間は、自然のままでは合理的な判断とは異なる判断をしてしまうケースが多く、そのずれをよく理解して教育していかないと『生きる力』を子どもたちに身につけさせることは難しい。また、金融知識の有無が大人になってからの資産保有金額に影響を与えていることが最近の経済学の研究から明らかになっている。将来を見据えて今を考える力を身につけさせるという点でも、金融教育は重要である」と話されました。さらに、「子どもに金融や経済を教える際の一番の課題は、年齢が低いと将来のことを真剣に考える力がまだ弱いことである」と述べられ、「夏休みの宿題を先延ばしにして最後にやる人は、肥満の割合や借金を抱える傾向が高いという研究結果がある。将来のことをきちんと考えられないとこういう問題があるよという実例を子どもたちに教えてあげるとか、計画通りに宿題をやる習慣をつけさせることが、一見金融とは関係ないように見えながら、実は金融教育にもつながっているということを先生方にご理解頂き、子どもたちをご指導頂ければよいのではないか」と述べられました。大杉氏は、「『生きる力』を育てるために、中央教育審議会ではキーコンピテンシーという考え方を手掛かりとした。その要素の一つである道具を用いる能力を身につけ、きちんとした判断の基軸を持つ子どもたちを育てていきたい」と述べられたうえで、お三方からのお話を踏まえ、「教員は、教える側と学ぶ側の両方の視点で金融教育を考えていく必要がある」と述べられました。「教える側の視点としては、金融教育を行おうという流れを学校でどう作っていくかが重要である。カリキュラムマネジメントという形で、どの教科がどう結びついて行くかを検討し、教科横断的な教育を行うことが望ましいのではないか。一方、学ぶ側の視点から、金融教育を学ぶ子どもたちがどういう状況にあるのか、どのような傾向があるのかを踏まえて授業計画を立てることも大切である」と述べられました。

続いて、限られた時間の中でいかに効果的、効率的に金融教育を実践していくか、授業時間の制約や授業の準備等の課題を克服するための工夫や知恵について伺いました。新井氏は、「大切なのは、無理をしないこと。自分だけですべてをやろうとするととてもできないということを明確に認識したほうがいい」とアドバイスされたうえで、「まず、1年間のカリキュラムのどこかで枠組みを設定する。また、金融教育は知識だけではだめで、座学を超えた体験を取り入れる必要がある。外部団体の教材を利用する等して、蓄積された授業実践を真似することも、無理なく金融教育を行うための一つの方法である」と述べられました。小関氏は、「時間が足りないからこそ金融教育において子どもたちの実態を丁寧に把握することは重要である。子どもたちがどんなお金のもらい方、使い方をしているのか、具体的な実態を把握することが、そのまま先生方の問題意識になる」と述べられました。大竹氏からは、「授業時間に限りがある中で金融教育を行うには、普段の授業の中に金融の場面が入っていたらそれを活用し、様々な教科の中で自然に金融教育ができるようにするのが望ましいのではないか。算数や数学の授業の中で金利教育を取り入れる、国語の中で債務に苦しむという内容の文章があれば、そこで取り扱う。金融教育という特別な枠を使わないでも教育を可能にする工夫ができればよいのではないか」と述べられました。

最後に、金融教育の普及のための今後の課題や方策について、新井氏からは、「すでに他の先生も仰っていることだが、まずは児童生徒をよく見ること。児童生徒のニーズに合ったものを我々が提供できるかが肝心である。二つ目に、金融に関しては自分たちも素人であるという自覚を持ち、一緒に学ぶ姿勢を持つこと。最後に、外部のサポートを活用すること。但し、その際は生徒の現実を踏まえて教員がフィルターにかけることも必要である」というアドバイスがありました。小関氏は、「金融教育では保護者の理解も重要である。保護者と子どもがともに学ぶ場を設けることができたらよいと思う。また、子どもの主体性を確立させるために、ご自身の指導の中で子どもを受け身にしていないかを時々振り返ってみてほしい」と述べられました。大杉氏は、「金融教育を広く普及させるという視点のほかに、この部分をなんとかしたいというピンポイントの課題を拾い、それを改善するための授業や指導、教材を考えるという視点もあってもいいのではないか」と述べられました。大竹氏は、「金融広報中央委員会のホームページはかなり充実している。もっと広く知られるような工夫はできないか。また、かつての子ども銀行は、貯蓄の重要性を実感させるよい取り組みだったし、長期的な効果があったという研究分析もある。そういう取り組みができないだろうか」と述べられました。

パネルディスカッションの模様

著名人・有識者が語る一覧をみる

  • 日本文学研究者・早稲田大学特命教授 ロバート キャンベルさん
  • 歌手・タレント・女優 森公美子さん
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  • 医学博士 日野原 重明さん
  • 山形弁研究家 タレント ダニエル・カールさん
  • 公認会計士 山田 真哉さん
  • タレント パトリック・ハーランさん
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  • プロスキーヤー クラーク記念国際高等学校校長 三浦 雄一郎さん
  • 明治大学文学部教授 齋藤 孝さん
  • マラソンランナー 谷川 真理さん
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  • TVキャスター 草野 仁さん
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  • 宇宙飛行士 山崎 直子さん
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