住宅購入時のサポート制度とコロナ禍で変わる住宅選び
住宅購入時のサポート制度
住宅費は、教育費、老後の費用と並び、人生の三大支出の一つと言われています。この高額な住宅取得をサポートする主な制度としては、
があります。
1.住宅ローン減税
控除期間13年の特例が延長
床面積の条件も緩和
「住宅ローン減税(正式には住宅借入金等特別控除)」とは、ローンを10年以上組んで住宅の取得(新築、新築住宅の購入、増改築など)をした際に、年末の住宅ローン残高の1%(年最大40万円<長期優良住宅などは50万円>)が、10年間、毎年の税金(所得税および住民税)から控除される制度です。
元々、2019年の消費税率引き上げに伴う経済対策として、控除期間を3年間延長し、計13年間とする特例が導入されていましたが、コロナ禍での景気減速を考慮して、令和3年度税制改正でこの特例措置の期限が延長されています。
この特例には契約期限と入居期限があり、注文住宅の場合は2021年9月末の契約、分譲住宅の場合は同年11月末の契約まで、特例が適用されます。また、入居期限も2022年12月末に延長されており、これから住宅の購入や改築を検討する人も利用することが可能です【図表1】脚注1。
- 入居期限
-
2021年12月末※2、※3
契約期限 注文住宅 2020年9月末 分譲住宅 2020年11月末 中古住宅※1(事業者売主) 2020年11月末
↓
改正後- 入居期限
-
2022年12月末※3
契約期限 注文住宅 2021年9月末 分譲住宅 2021年11月末 中古住宅※1(事業者売主) 2021年11月末
- 個人が売主の中古住宅の契約は消費税がかからない場合、控除期間13年特例の適用外(この場合の控除期間は10年、入居期限は2021年12月末)
- 新型コロナウイルス感染症の影響によって、注文住宅等への入居が遅れたなど「住宅ローン減税の適用要件の弾力化」要件を満たしている場合
- 引き渡し後6か月以内に居住しなかった場合は対象外
住宅ローン減税の11年目以降の控除額は、10年目までと条件が変わり、「建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3」と「年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価(上限4,000万円)の1%」のいずれか少ない方の金額が適用され、3年間で最大約80万円となります【図表2】脚注2。
- 11年目以降は①②どちらか少ないほうの額を控除(年額)
- 建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3
- 年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価(上限4,000万円)のうちいずれか少ない方の金額の1%
例えば、借入額2,500万円、建物価格3,000万円、金利1%、返済期間35年、扶養家族(配偶者を含む3人)のケースで試算すると、10年間の控除額は160万円、11年目以降は48万円になります。
また、2021年1月購入分から、所得金額1,000万円以下の人を対象に、住宅の床面積の要件が「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されており、単身者など1人でマンションを購入する場合でも、住宅ローン減税をより利用しやすくなりました。
なお、住宅ローン減税の控除額や控除率については、令和3年度税制改正大綱で、2022年度以降の見直しが言及されているため、今後の動きを注視しておくとよいでしょう。
2.すまい給付金
ローン借入者は所得によって最大50万円を受け取れる
「すまい給付金」は、住宅ローン減税による負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して、住宅ローン減税と併せて負担軽減を図る制度です。
住宅ローン減税は、支払っている税金から控除される仕組みであるため、収入が低いとその効果は小さくなりますが、「すまい給付金」は、収入額の目安が775万円以下の人が住宅を購入する場合に給付金を一括で受け取れる仕組みで、収入が低いほど受給額が多くなります【図表3】脚注3。
収入額の目安※1 | 給付基礎額※2 |
---|---|
450万円以下 | 50万円 |
450万円超525万円以下 | 40万円 |
525万円超600万円以下 | 30万円 |
600万円超675万円以下 | 20万円 |
675万円超775万円以下 | 10万円 |
- 夫婦(妻は収入なし)と中学生以下の子ども2人の世帯の場合の目安
- 実際の給付額は、給付基礎額に持分割合をかけたものになる
すまい給付金も、住宅ローン減税と同様に令和3年度税制改正により、2021年12月末までだった住宅の入居期限が、2022年12月末までに延長され、床面積の要件も50㎡以上から40㎡以上に緩和されました。
なにかと費用がかさむ住宅購入時には、現金給付のすまい給付金は役立つ場面が多いでしょう。
3.住宅取得等資金の贈与税非課税特例
贈与税が一定額非課税になる制度も延長
住宅ローンを組むとしても、頭金が多ければ返済負担額を減らすことができるため、親から援助を受ける人もいると思いますが、相手が親だとしても金銭の贈与を受けると贈与税の課税対象になります。
そこで活用したいのが、「住宅取得等資金の贈与税非課税特例」です。これは、父母、祖父母など直系尊属から資金提供を受けて住宅を購入した場合に、贈与税が一定額まで非課税になる制度です。
2021年4月1日以降の契約からは、贈与税の非課税枠が縮小される予定でしたが、令和3年度税制改正で、2021年12月末まで据え置きになりました【図表4】脚注4。
また、対象となる要件のうち、床面積の下限が50㎡以上から40㎡以上に引き下げられました(贈与を受けた人のその年の合計所得金額が1,000万円以下である場合のみ)。
受贈される人の要件 |
|
---|---|
非課税枠(省エネ等住宅) | 1,500万円 |
非課税枠(上記以外の住宅) | 1,000万円 |
契約の締結日 | 2020年4月1日~2021年12月31日 |
- 贈与を受けた年の1月1日時点の年齢
- 床面積40㎡以上50㎡未満の場合は合計所得金額1,000万円以下
4. グリーン住宅ポイント
条件に適合すれば最高100万ポイントを付与
これまで紹介してきた3つの制度は、いずれもコロナ禍以前から存在していたものが延長(あるいは条件が緩和)されたものですが、これから解説する「グリーン住宅ポイント制度」は、新型コロナウイルスの影響を考慮した経済対策として新たに導入された制度です。
グリーン住宅ポイント制度では、一定の省エネ性能などを備えた住宅を購入もしくはリフォームした際に、ポイントが付与されます。
例えば、「認定長期優良住宅」など高い省エネ性能を備えた住宅を購入する場合、基本ポイントとして40万ポイント(40万円相当)、さらに「東京圏からの移住」という条件を満たすと60万ポイント(60万円相当)が特例付与されるため、合計100万ポイント(100万円相当)を受け取ることができます【図表5】脚注5。
対象住宅 | 発行ポイント (基本の場合) |
発行ポイント (特例の場合※) |
---|---|---|
高い省エネ性能等を有する住宅 (認定長期優良住宅、認定低炭素建築物、性能向上計画認定住宅、ZEH) |
40万ポイント | 60万ポイント (合計100万ポイント) |
省エネ基準に適合する住宅 (断熱等級4かつ一次エネ等級4以上を満たす住宅) |
30万ポイント | 30万ポイント (合計60万ポイント) |
- 以下のいずれかに該当する場合
- 東京圏から移住するための住宅
- 三世代同居仕様である住宅
- 多子世帯が取得する住宅
- 災害リスクが高い区域から移住するための住宅
対象住宅 | 発行ポイント |
---|---|
|
30万ポイント (住居の除却を伴う場合は45万ポイント) |
|
15万ポイント |
ポイントは、商品と交換したり、追加工事費に充てたりできます。交換できる商品のラインナップは、家電や食料品、子育て関連商品など多彩です。
また、追加工事は指定されたものに限られますが、ワークスペース設置や菌・ウイルス拡散防止など、コロナ禍での「新たな日常」に役立つものも多くあります。
グリーン住宅ポイント制度の対象となるのは、2020年12月15日から2021年10月31日までの新築、中古住宅の購入、リフォーム工事などです。小さなリフォームでも制度の対象になる可能性があるので、確認しましょう。
脚注
- 1
- (出所)国土交通省「住宅ローン減税等が延長されます!」を基に監修者作成
- 2
- (出所)国土交通省「住宅ローン減税制度の概要」を基に監修者作成
- 3
- (出所)国土交通省「すまい給付金」を基に監修者作成
- 4
- (出所)国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」を基に監修者作成
- 5
- (出所)国土交通省「グリーン住宅ポイント制度の概要」を基に監修者作成