平成15年度「全国金銭教育協議会」
パネルディスカッション
「学校における金融に関する消費者教育の進め方」
フロアとの質疑応答
宮坂 ここでフロアの方からご質問やご意見を出していただいて、それがまとまったところで両先生にお答えいただきましょう。
フロア 藤原先生、選択家庭科の中では起業家教育ということもかなり意識しておられるような気がしましたが、いかがでしょう。
フロア 学校教育の中で、先生方も苦労して金銭教育をなさっています。現在、先生方がなさっていることを否定するのではなく、もうちょっとこういうふうにしたらという角度を変えたアドバイスを民間の視点からお願いします。
また縦横斜めのしがらみの中でかなり縛られているところがありますので、そういう呪縛をとくための鍵を教えていただけると参考になります。
フロア 藤原先生に伺います。教育現場ではなかなか触れにくいことですが、少女たちの援助交際が大きな社会問題になっています。先程のアドバイスの中に、来年は自分たちで稼いで寄付することに挑戦したらというのがありました。しかし6万円稼ぐことがどれだけ大変かという意識は、残念ながら今日、すべての少女に共通するものではなくなっています。
自分たちで企画して何かを販売して苦労して得る6万円と、少女たちが簡単に得ることができる6万円の違いを、どのようにお考えになりますか。
宮坂 大変重要で意味深い質問が出てまいりました。まずは藤原先生からお願いします。
藤原 まず起業家精神ですが、どこの企業も必死です。だいたい人は年齢が40歳以上、年収が1千万円を超える辺りから守りに入って保守化していきます。教員もしかりなんですよ。
そこで、金銭教育や経済を表層部の呼び方である貨幣というようなことで終わらせてほしくないのです。むしろ、貨幣の裏側にある実相、実体、価値、財産、税金というものをダイレクトに学ばせることが大切だと思っています。とりわけ経済を価値の観点から学ばせることが大事です。
私は価値の差異をハンバーガーの授業の2回目でやります。地図上でどこに出店すると集客力がどれくらい違うとか、近所で同一業態の2つの店を観察して、どちらが流行っているか観察させ、流行る店、流行らない店の理由をディスカッションさせます。ここで価値の差異ということが導き出されるわけですね。
2番目の質問ですが、実は先生方が一番呪縛されているのは、失敗しちゃあいけないということなのです。私の25年間のビジネスマン生活の中で断言できるのは、成功よりも失敗の方がはるかに学びが豊かで大きいということです。このためには保護者がもっとドンと構えていなくてはなりません。
なぜ先生方がこんなに萎縮してしまったかといったら、その責任の半分は保護者、そして半分はマスコミです。これを解き放つのは保護者と地域なんですね。マスコミが何と言おうとあの失敗は許すというくらいでないと、先生や学校はどんどん危なくない方へと行ってしまいます。
3番目の質問は確かに扱いにくい。もしも保護者と申し合わせができて時間がじっくり取れたら、同じ6万円を得るのに寄付を仰ぐのと、自分たちで企画して仕入れて売るのと、自分の体をモノとして売るのと、どれがいいことでどれが悪いことなのか、またいい悪いがあるのかということを議論させてみたらよいと思います。
最終的にどの結論に落ちつくとしても、体をモノとして扱っていいのか?ということが子どもたちの脳裏に刻み込まれるはずですから、何もしない状態で事件に巻き込まれたりするのとは全然違ってくると思います。