金融・生活シンポジウム2001
どうなる新世紀のくらしとお金~ペイオフ解禁を目前にして~
パネルディスカッション
(3) 新しい法律による消費者保護の仕組み
玉置 金融機関のディスクローズの問題とも多少関係あるのですが、今年の四月から新しく金融商品販売法という法律が施行されました。これについては原さんが大変お詳しいとうかがっております。
原 私は金融商品販売法の制定にかかわってまいりました。金融ビッグバン以来、消費者の自己責任という言葉が先行していますが、消費者と企業とを比べると情報力や交渉力という点では格差があり、消費者保護の仕組みが必要だと考えられ、この法律が制定されました。
この法律には二つの大きな柱があります。一つはリスクにかかわる重要事項の説明を、販売業者に義務として課していることです。この義務を果たさずに損害が生じた場合には、損害賠償を消費者が求めることができます。
二つ目は金融機関は「勧誘方針を策定し公表します」ということです。勧誘方針には、その人に合った商品を販売しなければいけないということも含まれます。例えば、700万円を資産運用するとします。でも年収が1,500万円ぐらいある人の700万円と、退職金800万円のうちの700万円では価値が違うわけです。そういったケースにも対応できるように、適合性の原則という考えを盛り込んだ法律です。
郵便局の郵便貯金と簡易保険、それから商品先物取引を除いてほとんどの金融商品が対象になっている点も、この金融商品販売法の大きな特徴です。
玉置 金融取引にも関連する消費者契約法という法律も同時に施行されましたね。
原 消費者契約法は、消費者と事業者が交わす契約すべてにかかわる法律で、金融取引もその中に入ってきます。この消費者契約法もかなり強い法律で、損害賠償よりもっと厳しい契約の取り消しを求めることができます。
例えば、1年後には必ず金利が5.0%ぐらいになるというふうに断定をして契約をしたり、消費者に不利になるようなことを分かっていながらあえて言わなかったとか、そういうようないくつかのケースでは契約の取り消しを求めることができます。
玉置 ただ、未然に防止する努力も大切ですよね。
原 法律ができても、損害賠償や取り消しを求めるような事態に至らないということが大事なわけです。そこでこれからは、預金でも保険でも、預けるというのでなく、金融商品を購入するという考え方で、契約に臨んでいただきたいと思います。
その時のポイントというものを四つ挙げてみました。1番目が「金融商品の仕組みや内容は理解できましたか」ということ。2番目が「リスクにかかる重要事項の説明を受けてください」。3番目に、商品だけでなく、その商品の販売や運用をしている事業体の健全性も重要になるので「金融機関や運用先の健全性はどうか」ということです。4番目に「パンフレットや契約書などを大切に保管」することです。
特に長期にわたる契約ではトラブルを防ぐために、きちんと文書で確認をすることが大事です。加えて、金融商品販売法も消費者契約法も訴える場合には、立証責任は消費者にあります。その意味からもきちんと契約に関する書類を管理しておくということが大切です。