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金融・生活シンポジウム2001

どうなる新世紀のくらしとお金~ペイオフ解禁を目前にして~

パネルディスカッション

(1) 個人資産の運用とリスクのとらえ方

玉置玉置 私は3年前にもこのシンポジウムのコーディネーターを務めました。景気は依然として低迷しておりますが、金融システムの危機はどうやら遠ざかりつつあるようです。また規制緩和による新しい金融商品の登場など、新しい金融のパラダイムがおぼろげながら現れつつあると思います。

その一方で、個人の金融資産が1,400兆円にも達しました。この金融資産が本当に日本経済のなかで活かされているんだろうかという疑問の声もあがっています。こうした状況のなかで、今年4月から金融商品にかかわる消費者を保護する法律が施行され、来年4月からはいよいよペイオフが解禁される予定です。

そこでまず、現在の金融環境等について、お話をうかがいます。


蝋山蝋山 個人金融資産の1,400兆円についてお話しすると、ほとんどが銀行や保険会社に預けられて、運用は金融機関にお任せしますよという形で蓄積されています。ではその運用はどうなっているのかというと、その約45%が国あるいは地方行政の債務という形で運用されています。

この政府の債務というのは、結局は税金で利息が支払われことになるので、1,400兆円の5割弱は自分たちの負債でもあると考えられるわけです。そうなると、1,400兆円というのは本当にそれだけの意味があるかと、よく考えてみる必要があるように思います。


原 消費者としても、個人金融資産をどう活かすかが現在の大きな課題だと考えていると思います。ただ、実際にはいま非常に低金利で、そして株も安いので、預けたままじっと我慢をしているというのが実態だと思います。

その一方で、金融広告が増えたり、銀行で投資信託商品が買えたり、金融機関の破綻ということもあったりと、急激な変化も肌身に感じておりますので、いよいよ自己責任を問われる時代であり、消費者の自覚と責任が大きなものになっていると感じております。


鳥越鳥越 私の体験を申し上げますが、1989年ごろに事務所用にワンルームマンションを6,300万円で購入しました。いまからすると、ずいぶん高いですよね。でも当時、そんなものだったのです。2年前に1,500万円で売りました。4,800万円の損です。授業料ですね、これは私の。こういう私の体験に基づいて、金融資産運用については二つのポイントで考えるべきだと思っております。

一つは、資産運用はリスクを伴うものである。もう一つは日本経済が右肩上がりで、株価、不動産も含めて常に上昇しつづけるという時代は20世紀でもう終わったんだなということです。上がることもあるけれども下がることもある。そういう状況のなかで運用をしていくんだということをしっかり認識することが必要だと思います。


玉置 先進国の金融資産の内訳と比べると日本では株式出資金の比率が特に低いのが特徴です。蝋山さん、日本人はやはり手堅いですね。

蝋山 危険という言葉を辞書で調べると、リスクのほかにデンジャーという英語も出てきます。我々はそのデンジャーとリスクを区別して使っていない。危険とひとまとめにして、避けるべきことだととらえています。

しかし、これからは避けるべきデンジャーと、管理すべきリスクというものを分け、リスクをうまく管理することによって収益をあげる。こういう時代になってきていると思います。いままでは、仕組みとしても人々をリスクから遠ざけてきた。環境が整えば、日本人もそれなりにリスクを自発的にとれると私は思っています。

 なかなか面白いお話ですが、消費者からすると、リターンは得たいけれど、リスクは避けたい。なぜそうなるか。それは私たちがリスクというものをうまく理解できていないことがとても大きいと思いますね。リスクというのを消費者からみると、単純に結果としての元本割れというところだけで、なぜそうなるかというところまでいきつかない。

私としては、個人金融資産の運用には発想の転換が必要だと思っております。一つは単純に銀行や生命保険に預けてしまうというのでなく、しっかり運用をしていくという発想です。二つ目は、市場でうまく活かし、社会に活用させる運用はどういうものかを併せて考えていく。このように発想を転換し、リスクの正確な把握に努めることが大前提だと感じております。

鳥越 私は個人の株式投資が伸びないのは、日本人の文化のせいだろうと思うのです。自分の資産をお上や他人任せにしてなんとか凌いできた、というのが結果としてこういう形になっているんだと。

もうちょっと賢くなってもいいかなと思いますが、アメリカのような家の金融資産の半分以上を株式や証券等に投資している資産構成には懸念を感じます。イギリスの女性経済学者が『ギャンブル資本主義』という本を書いているのですが、やっぱりそれは困るなと。

僕は非常に古めかしいかもしれないけれども、額に汗して働いて、それで得た所得で暮らしていくというのが基本で、余裕があれば運用するというのがまっとうな生き方というのが抜けきらない。とはいえ、危ない危ないというだけじゃなく、リスクをとりながらリターンも考えるという一種の賢さが必要な時代になりつつあるなという感じはしています。

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