貯蓄・生活シンポジウム 1999
21世紀 どう変わるくらしと経済~本当の豊かさへの処方箋~
パネルディスカッション
(3)少子・高齢化社会における負担をどう受け止めるべきか
佐藤 資金運用に関して年金の問題が出ましたが、これからの日本にとって金融制度の大改革と並んで大きな取り組み課題になるのが、少子・高齢化の問題であると思います。
企業年金の改革や介護保険制度の導入もその1つだと思いますが、この中で考えなければならないのは、誰が負担をするのかという問題だと思います。財政的にも難しい局面になっておりますが、鳥越さん、いかがでしょうか。
鳥越 今、日本には120万人くらいの寝たきりの方がいます。その人たちに対する介護の内容は、食事・排泄・入浴の介助と大きく分けて3つあります。中でも一番大変なのは排泄の介助です。よく聞くのは、近親者よりも、全然知らない人にある程度の負担をしながら世話をしてもらった方が、うまくいくそうです。
介護が必要になると、金銭的なことが大きな問題として出てくるわけです。来年からは40歳以上を対象に介護保険がスタートしますが、高齢化が猛スピードで進んでいくことを考えると、金銭的負担はそれだけでは耐えられなくなるだろうと思います。
また、マンパワーもさらに必要になってくるでしょう。国や自治体だけに任せるのではなく、コミュニティーで支えていく方式など、手探りでネットワークを作っていかなければいけないような気がします。
吉永 高齢化社会だけなら何とか凌(しの)げるかも知れませんが、そこに少子化が加わることで問題がさらに難しくなっています。特に団塊の世代が高齢に達した時、一番世代バランスが悪くなるのではないかと思います。
シビアなようですが、旧世代のように子どもに期待したり、誰かに何かをしてもらえるかもしれないという発想をしてしまうと、後でこんなはずではなかったのにということになると思います。一人になった時にどうやって生きていくのか、必要なものは何なのか、非常に厳しく考えていく必要があります。
しかし、それを考えるのは不幸なことでも、暗くなることでもないと思います。逆にすっきりする。それを考えないで何となく不安であると思っている時が、一番落ち着きが悪いのではないでしょうか。
原田 家族の絆というのは重要ですが、老後は子には頼らないというようになっていくのではないでしょうか。結論としては、欧州のように消費税率を引き上げ、目的税化して年金負担などに充てるしかないと思います。