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「私は大丈夫」が一番危ない!
巧妙化する特殊詐欺の手口と防止策

(特殊詐欺の手口と被害状況)

多種多様化した手口によって10類型に分類された特殊詐欺

警視庁によると、特殊詐欺は当初オレオレ詐欺、架空料金請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺の4つの手口(総称:振り込め詐欺)から始まりましたが、以降もさまざまな手口が出てきているとのことです。架空料金請求詐欺では、電子マネーを悪用するケースが増えるなど、だまし取るツールも多様化しています。そのため2020年1月1日より、特殊詐欺の手口が10種類に分類され【図表1】、次のような定義となりました。

【図表1】類型別特殊詐欺の手口
名称 特色
① オレオレ詐欺 息子や孫といった親族やその上司、警察官、弁護士などを電話で名乗り、親族が起こした仕事のトラブルや事故を口実にお金を要求して、現金をだまし取る(脅し取る)
② 預貯金詐欺 警察官や銀行協会職員などを電話で名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されているのでキャッシュカードの交換が必要」などと言って暗証番号を聞きだし、キャッシュカード等をだまし取る(脅し取る)
③ 架空料金請求詐欺 有料サイト事業者や法務省、裁判所などの名称で「未払い料金を支払わないと裁判になる」といったことをメールやはがき(封書)で知らせ、金銭等をだまし取る(脅し取る)
④ 還付金詐欺 自治体の職員などを電話で名乗り、医療費や税金、保険料などの還付金が受け取れるなどと言って、携帯電話で被害者にATMを操作させ、被害者の口座から犯人の口座に送金させる
⑤ 融資保証金詐欺 実際には融資をしないのに、簡単に融資が受けられると信じ込ませ、融資を申し込んできた人に対して「保証金が必要です」などと言って金銭等をだまし取る(脅し取る)
⑥ 金融商品詐欺 架空または価値がまったくない未公開株や有価証券、高価な物品などについて虚偽の情報を教えて、購入すれば利益が得られると信じ込ませ、その購入代金として金銭等をだまし取る(脅し取る)
⑦ ギャンブル詐欺 「パチンコ打ち子募集」などと雑誌に掲載したり、不特定多数に同内容のメールを送り付け、会員登録などを申し込んできた人から、登録料や情報料の名目で金銭等をだまし取る(脅し取る)
⑧ 交際あっせん詐欺 「女性を紹介」などと雑誌に掲載したり、不特定多数に同内容のメールを送り付け、女性の紹介等を申し込んできた人から、会員登録料金や保証金として金銭等をだまし取る(脅し取る)
⑨ その他の特殊詐欺 ①から⑧の類型に該当しない特殊詐欺
⑩ キャッシュカード詐欺盗(窃盗) 警察官や銀行協会、大手百貨店の職員を電話で名乗り、「あなたのキャッシュカードが不正利用されているので使えないようにする」などと言って、隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る

(特殊詐欺の定義)

「特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や、隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む)」(警視庁WEBサイトより)。

(とくに注意が必要な手口)

オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗の3つの手口を合わせた「オレオレ型特殊詐欺」の認知件数(※警察当局が犯罪と認知した件数)は、特殊詐欺の総認知件数の7割近くにも上り、主要な手口となっています【図表2】脚注1。今年に入ってからは、ATMを悪用した還付金詐欺が急増しており、これら4つの手口はとくに注意が必要です。

【図表2】手口別の認知件数の推移

下記表の棒グラフ

合計 オレオレ
詐欺
預貯金
詐欺
架空料金
請求詐欺
還付金
詐欺
キャッシュ
カード
詐欺盗
上記以外
H23 7,216 4,656 756 296 1,508
H24 8,693 3,634 1,177 1,133 2,749
H25 11,998 5,396 1,522 1,817 3,263
H26 13,392 5,557 3,180 1,928 2,727
H27 13,824 5,828 4,097 2,376 1,523
H28 14,154 5,753 3,742 3,682 977
H29 18,212 8,496 5,753 3,129 834
H30 17,844 9,145 4,844 1,904 1,348 603
R1 16,851 6,725 3,533 2,375 3,777 441
R2 13,550 2,272 4,135 2,010 1,804 2,850 479

(「劇場型」特殊詐欺とは)

また、近年、緻密な計画と周到な役割分担によって被害者をだます「劇場型」と言われる手口が、さまざまなタイプの特殊詐欺に利用されています。犯行シナリオに合わせて、詐欺グループが演じる警察官や銀行員などが複数人登場して被害者を信じ込ませるもので、高齢者に限らず多くの人が被害に遭っています。

犯行例からわかる 巧みなシナリオと話術

特殊詐欺の巧妙さがうかがえる犯行事例を紹介します。

オレオレ詐欺

A子さんの自宅電話に、息子を名乗る犯人から「会社のお金が入ったかばんを落としてしまった! 携帯電話も入っているので、遺失物センターから自宅電話に連絡がいくようにした。連絡がきたらお金が無くなっていないか確認して」という電話がかかってきました。

しばらくすると、遺失物センター職員を名乗る別の犯人から電話があり、「お金は無くなっていますね」と言われます。

息子を名乗る犯人に、お金が無くなっていることを伝えると、「今日中にお金を用意しないと会社をクビになる! 上司と自分で半分用意できるから、残りのお金を何とかして」と懇願されます。

さらに、上司を名乗る犯人からも「私も負担するので」と言われ、上司が一緒にいるなら本当だろうと、A子さんは信じてしまいました。

息子を名乗る犯人に「銀行で引出し理由を聞かれたら、リフォーム代とか言ってごまかして」、「遺失物センターに行く自分に代わり、同僚がお金を取りに行くから用意しておいて」と言われ、お金を取りに来た同僚を名乗る犯人に、お金を渡してしまいました。

還付金詐欺

市役所職員を名乗る犯人から、B子さんの自宅電話に「医療費の還付金受取り手続きがまだのようですが?」という電話が来ました。

B子さんは覚えがなかったのですが、「以前に案内の封筒を送っています。手続きの期限が本日までなので、お電話しました」と犯人に説明され、B子さんは封筒を見落としたと思い、話を信じてしまいました。

「ATMなら手続きが間に合いますので、今から携帯電話を持って、近くのATMに行ってください。着いたら操作方法を説明するのでお電話ください」という犯人の指示通りに、B子さんはATMへ急ぎます。

犯人は「還付金を振り込むので、振込みボタンを押してください」と説明して、振込みボタンを押すと自分の口座に還付金が振り込まれると勘違いさせます。そして、金額入力画面では「今から言う整理番号を入力してください」と言って、事前に聞きだした振込み限度額のぎりぎりの数字を入力させ、B子さんはお金を犯人の口座に振り込んでしまいました。

(手口の共通点)

こうした手口の共通点は、犯人が最初の接触に使うツールのほとんどが、固定電話であるということです。

最近では「コロナ助成で給付金が出ている」、「ワクチン接種優待」といった新型コロナウイルス関連をだましのきっかけにした手口も見受けられますので、注意が必要です。

油断禁物!2020年の被害状況

警察庁が発表した2020年における特殊詐欺の被害状況を見ると、認知件数1万3,550件(前年比19.6%減)、被害額は285.2億円 (同9.7%減)となり件数、金額とも減少しました【図表3】脚注2

この状況について警視庁は、「2020年はコロナ禍により平時とは異なるため、油断は禁物です」と強い警戒感を示します。

【図表3】特殊詐欺における認知件数と被害額の推移
認知件数の推移

下記表の折れ線グラフ

年度 認知件数
(件)
H23 7,216
H24 8,693
H25 11,998
H26 13,392
H27 13,824
H28 14,154
H29 18,212
H30 17,844
R1 16,851
R2 13,550


被害額の推移

下記表の折れ線グラフ

年度 被害額
(億円)
H23 204.0
H24 364.4
H25 489.5
H26 565.5
H27 482.0
H28 407.7
H29 394.7
H30 382.9
R1 315.8
R2 285.2
【図表3】特殊詐欺における認知件数と被害額の推移
認知件数の推移

下記表の折れ線グラフ

年度 認知件数
(件)
H23 7,216
H24 8,693
H25 11,998
H26 13,392
H27 13,824
H28 14,154
H29 18,212
H30 17,844
R1 16,851
R2 13,550


被害額の推移

下記表の折れ線グラフ

年度 被害額
(億円)
H23 204.0
H24 364.4
H25 489.5
H26 565.5
H27 482.0
H28 407.7
H29 394.7
H30 382.9
R1 315.8
R2 285.2

(増える被害)

実際、1件当たりの被害額は220.2万円で前年比11.9%増と、増加しています。また東京都では、2021年1月から6月における還付金詐欺の認知件数は、前年同期比で2倍近くに急増しており、オレオレ詐欺も前年同期に比べ多く発生しています。「同様に全国でも増加すると思われます」(警視庁談)。

(被害は大都市圏に集中)

そのほかの2020年の被害状況の数値を見ると、被害は大都市圏に集中しています。認知件数は東京2,896件、神奈川1,773件、千葉1,217件、大阪1,107件、兵庫1,027件、埼玉1,026件、愛知596件で、総認知件数に対する7都府県の割合は71%にもなります。

(犯行は非対面から対面へ)

また、奪われたものはキャッシュカードが52.9%と最も多く、被害者と直接対面して犯行を敢行する手交型は68.2%となり、従来主流であった「非対面で現金をだまし取る」方法から、大きく変化しました。

(被害者の状況)

被害者の状況を見ると、高齢者(65歳以上)被害の認知件数は、法人被害を除いた総認知件数の85.7%となり、引き続ききわめて高い割合を占めています。

高齢女性の被害認知件数が約66%と際立っていますが、原因は、ほとんどの犯行に使われる固定電話に出るのが、高齢女性が多いからと言われています。

「だまされる理由に、性別や年齢はあまり関係ありません。例えば、架空料金請求詐欺の高齢者率は半分以下です。特殊詐欺は、誰もがだまされる可能性があります」(警視庁談)。

つづく


脚注

1
(出所)警察庁広報資料「令和2年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」
2
(出所)警察庁広報資料「令和2年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」

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