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ニューノーマル時代に考える「移住」という選択肢

(働き方や目的別で移住先を絞込む)

コロナ禍で高まる地方移住への関心

コロナ禍をきっかけにテレワークが普及した今、通勤に便利な首都圏から地方へと住替えを検討する人が増える傾向にあります。

2021年に内閣府が発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏に暮らす人で地方移住に関心がある人(「強い関心がある」、「関心がある」、「やや関心がある」の合計)は増え続け、直近の2021年9~10月の調査(全年齢)では、コロナ前(2019年12月調査)より約9ポイント上昇するなど、関心が高まっていることがうかがえます【図表1】脚注1

【図表1】地方移住への関心(東京圏在住者)

地方移住への関心(東京圏在住者)の棒グラフ

全年齢
強い
関心がある
関心がある やや
関心がある
あまり
関心が無い
まったく
関心が無い
2019年12月 2.6% 5.5% 17.0% 26.6% 48.4%
2020年5月 3.3% 8.0% 18.9% 24.6% 45.2%
2020年12月 4.2% 8.1% 19.2% 24.1% 44.4%
2021年4-5月 4.5% 9.7% 19.0% 30.2% 36.7%
2021年9-10月 4.1% 10.1% 19.8% 27.9% 38.1%
20歳代
強い
関心がある
関心がある やや
関心がある
あまり
関心が無い
まったく
関心が無い
2019年12月 3.5% 7.8% 20.8% 28.3% 39.7%
2020年5月 4.6% 10.6% 24.0% 23.7% 37.1%
2020年12月 5.9% 9.8% 24.6% 23.8% 35.9%
2021年4-5月 6.2% 12.7% 22.0% 31.6% 27.4%
2021年9-10月 6.1% 14.0% 24.8% 28.2% 26.8%

※東京圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県

とくに若年層の関心が高く、20歳代では44.9%と、半数近い人が「関心がある」と回答しています。

実際、総務省が発表した2021年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京都の転入超過数は5,433人と過去最少に、東京23区では2014年以降初めて転出者数が転入者数を上回りました(転出超過)。

コロナ禍で移動が制限され東京への転入者数が減ったという要因はあったにせよ、テレワークの普及が進んだことで、都心部から出て行く人が増えたことが推測できます。

(転入者が増加した地域)

また、転入者が増加したのは、つくば市(茨城県)や小山市(栃木県)など、都心から50㎞~100㎞圏内の自治体が中心です。

軽井沢町(長野県)や上越市(新潟県)など、100㎞を超えたエリアに移り住む人も増えていますが、新幹線駅があるなど、東京へのアクセスが担保された地域が多いようです【図表2】脚注2

【図表2】転入者が増加した自治体(関東財務局管内1都9県を対象)

2018年→2019年の転入者が増加した関東地図

2018年→2019年

1位 川崎市(神奈川県)
2位 練馬区(東京都)
3位 さいたま市(埼玉県)
4位 中野区(東京都)
5位 柏市(千葉県)
6位 大和市(神奈川県)
7位 千葉市(千葉県)
8位 杉並区(東京都)
9位 横浜市(神奈川県)
10位 渋谷区(東京都)

都心から100㎞圏外

甲府市(山梨県)+424人

2019年→2020年の転入者が増加した関東地図

2018年→2019年

1位 江東区(東京都)
2位 八千代市(千葉県)
3位 小金井市(東京都)
4位 相模原市(神奈川県)
5位 つくば市(茨城県)
6位 習志野市(千葉県)
7位 三鷹市(東京都)
8位 小山市(栃木県)
9位 軽井沢町(長野県)
10位 上尾市(埼玉県)

都心から100㎞圏外

軽井沢町(長野県)+466人
上越市(新潟県)+229人
川上村(長野県)+229人
前橋市(市域の一部)
(群馬県)+142人
2018年から2019年では転入が都心部に集中しているのに対し、2019年からコロナ禍の2020年にかけては50㎞圏外へと変化。軽井沢町など100㎞圏外の自治体でも転入者が増えている。

このことからも、テレワークの定着で毎日通勤する必要がなくなった人が、仕事場を兼ねた広く快適な住環境と、都心へのアクセスのバランスが取れた地域での暮らしを選択している様子がうかがえます。

地方移住に際して準備するべきこと

このように地方移住への関心は高まりつつありますが、移住するには乗り越えるべきハードルがいくつかあるようです。

(移住に先立つ心配事)

先に示した内閣府の調査によると、東京圏在住で移住に関心がある人が移住にあたって持つ懸念として、

「仕事や収入」と答える人が圧倒的に多く、「人間関係や地域コミュニティ」、「買い物や公共交通等の利便性」が続いています【図表3】脚注3

【図表3】地方移住にあたっての懸念(東京圏在住で地方移住に関心がある人)

仕事や収入 48.5%
人間関係や地域コミュニティ 26.8%
買い物や公共交通機関の利便性 24.4%
医療・福祉施設 19.5%
移住賃金の不足 18.1%
子育て・教育環境 13.7%
その他 1.7%
まだ具体的に検討していない 13.1%
特にない 11.1%

移住に際しては、こうした懸念をできる限り低減・払拭させておく必要があるといえます。

(移住の目的を明確に)

豊かな自然環境や生活コストの安さ、ゆとりある生活スタイルなど、田舎暮らしへの漠然とした憧れを抱いて移住先を探す人も多いと思いますが、地方移住を考えるにあたっては、移住で何を実現したいのか、「目的」をはっきりさせることが大切です。

移住先で地域貢献に繋がる仕事をしたい、テレワークで働きながらワークライフバランスを実現したい、農家に転身して自然豊かな環境で暮らしたいなど、目的によって移住する候補地や収集すべき情報も変わってきます。

【図表4】脚注4を参考に、移住に向けた基本的なプロセスを確認しましょう。

【図表4】移住するまでのステップ
step1
目的を決める
地方移住で実現したい目的を明確にして、移住先に求める条件やライフスタイルを考える。
step2
情報収集
全国の自治体情報を一覧できるサイトや移住相談窓口で情報収集。お試し居住などを体験。
step3
仕事を探す
ハローワークのインターネットサービスや、自治体の移住相談窓口などを活用して求職活動を。
step4
住まいを見つける
勤務地や生活条件に合わせて住まい探し。家賃や引っ越し代の補助制度についても調べる。

(移住先の絞込み)

目的を決めたら、地場産業の復興など地域おこしに力を入れている自治体、就農支援の制度が充実している自治体、首都圏と行き来しやすいテレワークに便利な地方都市など、仕事や生活に直結する条件で移住先の候補を絞り込みます。

海の近く、雪の降らない地域など、自身が望む自然環境も踏まえつつ、まずは自治体の情報を一覧できる移住情報サイトなどを閲覧して、条件に合った移住地を探します。

自治体によっては、気候風土などの基本情報はもちろん、地元企業の求人や空き家情報をホームページやSNSで発信しているので参考にしましょう。

(仕事探しの方法)

仕事探しでは、ぜひとも活用したいのが東京と大阪に1カ所ずつ設置されたハローワークの「地方就職支援コーナー」です。

全国544カ所のハローワークと連携して、移住希望地の求人や就職イベント・セミナーなどの情報を紹介してくれます。

また、大都市圏に居住する方が地方移住を検討する場合、一度は足を運びたいのが、東京にある「ふるさと回帰支援センター」です。

同センターでは各道府県が出先機関として移住相談窓口を設置しており、地元企業とも密接に繋がっているため、そこでしか得られない求人情報を紹介してくれることもあります。

自治体の支援制度や住宅情報などはもちろん、就業や起業のきっかけにもなる地域おこし協力隊やお試し居住施設についても紹介してくれます。

(移住先情報収集)

移住体験ツアーでは、地域住民との交流を通じて、気候・風土、生活・子育て環境、近所づきあい、交通事情など現地の情報を得られます。

また、そうした機会をとらえて、当地に先に移住した人に直接話を聞く機会をつくることも大事です。

移住して良かった点だけでなく、苦労したことや、移住前には想定していなかったことなどの情報も聞いたうえで、移住後の暮らしを具体的にイメージしていきましょう。

なお、こうした移住に役立つ相談窓口やインターネットの情報をまとめたので参考にしてください【図表5】脚注5

【図表5】移住に役立つサポート機関・WEBサイト

【移住全般に関わるサポート】

NPO法人ふるさと回帰支援センター
地方移住に関わる情報発信拠点で、今年20周年を迎える。44都道府県1政令市の窓口を設置し、仕事から住まい探しまで移住に関するあらゆる相談に対応する。2021年は過去最多となる約5万件の移住相談があり、移住セミナーも562回開催された。
ニッポン移住・交流ナビ
地域の魅力や仕事、空き家、地域おこし協力隊の紹介など、移住や地域交流に関わるさまざまな情報を発信するポータルサイト。相談員が窓口で対応してくれる「移住・交流情報ガーデン」では、イベントやセミナーも随時開催される。
  • ニッポン移住・交流ナビ
    https://www.iju-join.jp/
  • 移住・交流情報ガーデン
    東京都中央区京橋1-1-6越前屋ビル1階

【地方就職に関わるサポート】

ハローワーク地方就職支援コーナー
東京圏、大阪圏に居住する人で、地方企業や農林水産業へ就職を希望する人の就職支援をするコーナー。東京と大阪に1カ所ずつ設置されている。
  • ハローワーク飯田橋交通会館分室
    東京都千代田区有楽町2-10-1東京交通会館8階
    ふるさと回帰支援センター内
  • ハローワークプラザ難波
    大阪府大阪市中央区難波2-2-3御堂筋グランドビル4階
  • ハローワークインターネットサービス
    https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
LO活
LO活とは「Local+就活」の意で、若年層の地方就職をサポートする厚生労働省のプロジェクト。全国46の道府県、200以上の学校と連携し、就職に特化した情報を発信している。求人や地方企業、助成・支援制度などの情報を各道府県別に検索できて便利。個別相談やセミナーなども開催されている。


つづく


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