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「おかねの作文コンクール」

第55回「おかねの作文」コンクール(中学生)(2022年)

講評

第55回「おかねの作文」コンクールには、全国の中学校から5,113編の作品が寄せられました。テーマは、おかねに関することであれば「自由」です。厳正な審査の結果、特選5編、秀作5編、佳作10編の入賞作品が決まりました。

今回は、インフレや物価、SDGsといった大きなテーマを取り上げたもの、貨幣の流通やキャッシュレス化について着目したもの、医療・介護制度について深く考えたものなど生きたお金の使い道を具体的にとらえた作品が数多く寄せられました。お金を自分自身の暮らし方と結びつけ高い問題意識を持って取り組んだ作品の中から特選5編の概要を紹介します。

金融担当大臣賞「インフレに負けない私流おこづかいの守り方」の筆者は、インフレが進むなか無駄遣いもしていないのに、おこづかいで買えるお菓子、文房具が少なくなっていることを実感します。自分のおこづかいを守るために考えた必勝法とは……。普段から株式ニュースを見るのが好きで、日本経済新聞を熟読している筆者は母親と相談し1日100円のおこづかいをドルでもらうことにします。買い物をするときは、その日の終値のレートで円に交換してもらうなどといったいくつかのルールを決め実行。結果、為替レートによる変化よりも自身の変化の方が大きかったといいます。無駄遣いをしなくなり、ニュースや新聞をさらによく見るようになったこと、アメリカや他国の状況、為替レートに関係することを勉強するようにもなりました。そのうえで、どんな時代になっても自分の資産と生活を守れるよう、経済の仕組みを勉強し、知識を深めていきたいとしています。そしてこれからも「おこづかい大作戦」を続け将来につなげていきます!と元気よく結んでいます。審査員からは「日常の出来事から世の中の流れを理解し得た学びや経験が、疾走感のある中学生らしい文章で描かれた作品」と評価されました。

文部科学大臣賞「あの時五千円を財布から出していたら」は、毎年家族で旅行するほど沖縄が大好きな筆者は、小学校4年生の時に首里城の火災を知り募金をすることを決意しました。その時、母親の「本当に募金したいなら、自分で頑張ってお金を貯める方がいいんちゃう?思いのこもったお金の方がずっと価値がある」という一言に奮起し、今ある貯金からただ、お金を出すのではなく、自分で頑張って日々お金をかせぐ方法を選び、その大変さを経験したことで両親への感謝、お金の大切さなどに気づいていく様子が素直に書かれている作品です。お手伝い1回10円ルールを決め、毎日、家族全員の布団を出し入れするなどして、約2ヶ月後に1,910円の募金を届けました。その後もお手伝いを続け、現在は21,605円貯まっています。お金を貯めるのは時間がかかるし気持ちや体力も必要で、すごく大変なことだと実感し、同時に努力と気持ちのつまったお金は、とても価値のあるもので、そういうお金だから周りの人や自分も幸せな気持ちになるとまとめています。審査員からは「非常にユニークな視点でお金や世の中の価値、思いを素直に表現している。思いや願いをお金で届けることの意味や在り方について、自身の生活とつなぎしっかりとした考察をしている点が良かった」と評価されました。

日本銀行総裁賞「向き合う」は、自分のコンプレックスから目を逸らしていた筆者が、がんと闘う大好きな伯母との交流を通し、お金との向き合い方は生き方そのものだと気づいていく過程や心の動きが描かれた作品です。無駄遣いしないことが正しいお金の使い方だと思っていた筆者は、歯並びの悪さにコンプレックスを感じ始めていたものの、歯列矯正に100万円近くかかることを知り、見た目の問題にお金を使うのは無駄遣いだと思い込もうとしていました。そんな時、がん治療で入院中の伯母のお見舞いに訪れ、抗がん剤の影響で髪が抜けた姿を目にします。後日、悩んだ末に医療用ウィッグを購入した伯母が言った「残りの人生、どれくらいかわかんないけど、やっぱりこうやって生きたいんだよね。」という一言と笑顔に筆者の心はゆさぶられ、自分も歯列矯正をしたいと決心し、今ある貯金、お金の使い方を再度見直し両親に正直な思いを伝えます。こうした体験から、筆者はお金をどう使うかを考えることは自分の人生において何を大事にするのか、どう生きたいのかを熟考することだと気づきます。審査員からは「お金について考えることを通じて、自らの人生を深く考え、どう生きたいかを真剣に考えている。今回の経験を通して筆者自身が大きく成長したことを強く感じた。多くの人に読んでもらいたい」と評価されました。

日本PTA全国協議会会長賞「『貨幣』という文化」は、貨幣の文化的側面を考察した作品です。日常の買い物はキャッシュレス派という筆者ですが、毎年の初詣では、「ご縁がありますように」と五円玉を投げ入れるのが習慣になっています。ある日、お賽銭をキャッシュレスで払える寺社があることを知り、衝撃を受けた筆者は、あらためて貨幣のもつ意味を考え直します。日本のキャッシュレス普及率は20%。これに対し韓国は96%、他の先進国と比べても日本の普及率が低い水準のままである要因として日本人はお金に対し「貨幣」という道具以上の思いを持っているからだと考えます。最先端の技術と伝統が共存する貨幣の美しさ、冠婚葬祭でのお金や、お年玉、お賽銭などの季節や人生の節目に使われる現金の存在は日本独自の文化に根ざしたものだとし、将来キャッシュレス決済がスタンダードな支払い方法になったとしても「貨幣」という文化は消えないでほしいと結論づけています。審査員からは「なぜ日本ではキャッシュレス化が進まないのか度々議論になるが、この作品はその文化的背景について一つの示唆を与えている」「今後のキャッシュレス化に対し、良い視点で問題提起している」と評価されました。

金融広報中央委員会会長賞「円グラフに学ぶ」は、金融教育が浸透していないと言われる現状のなか、筆者の家庭で年1回開かれている「決算報告会」によって、父親からお金の流れ、貯蓄・投資について日々学んでいく様子がいきいきと描かれています。10年前、未熟児で生まれた妹の高額な医療費負担をきっかけに父親がキャッシュフローの記録をつけ始めます。収入が青色、支出が黄色、投資・貯蓄が緑色、税金が桃色に色分けされた円グラフは小学生の妹でもわかるように工夫されていて、筆者にとっても今まで知らなかった家のお金事情が目に見えてわかるようになりました。筆者は特に投資・貯蓄に関心を持ち、日本と欧米の違いなどを調べていくようになります。その結果、投資とは手持ちのお金を増やす前に他人を、そして社会を良くすることにつながると気づきます。ジュニアNISAで積立投資を始めた筆者は、将来、自分で生計を立てる時には、父親の円グラフを引き継いで決算報告会を開きたいと結んでいます。審査員からは「日本は家庭でお金の話をしない、したがらない、してはいけないと思い込んでいるところがあるが、この作品はまさに家庭の中で日々金融教育を実践されている。大人も含めて多くの人にこの作品を読んでほしい」と評価されました。

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  • 日本文学研究者・早稲田大学特命教授 ロバート キャンベルさん
  • 歌手・タレント・女優 森公美子さん
  • 映画字幕翻訳者 戸田奈津子さん
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  • デジタルクリエーター・ITエバンジェリスト 若宮正子さん
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  • 女優 山村 紅葉さん
  • 料理研究家 土井 善晴さん
  • IT企業役員・タレント 厚切りジェイソンさん
  • プロサッカー選手 中村 憲剛さん
  • 脳科学者 中野 信子さん
  • 作家 上橋 菜穂子さん
  • 落語家 林家 たい平さん
  • 劇作家 演出家 女優 渡辺 えりさん
  • 青山学院大学陸上競技部監督 原 晋さん
  • 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所教授 清水 達也さん
  • 元スピードスケート選手 長野五輪銅メダリスト 岡崎 朋美さん
  • 工学博士 石黒 浩さん
  • 日本体育大学教授 山本 博さん
  • 編集者 評論家 山田 五郎さん
  • 作家 荒俣 宏さん
  • 医学博士 日野原 重明さん
  • 山形弁研究家 タレント ダニエル・カールさん
  • 公認会計士 山田 真哉さん
  • タレント パトリック・ハーランさん
  • 精神科医 立教大学教授 香山 リカさん
  • 野球解説者 中畑 清さん
  • 順天堂大学准教授 鈴木 大地さん
  • 昭和女子大学理事長・学長 坂東 眞理子さん
  • プロスキーヤー クラーク記念国際高等学校校長 三浦 雄一郎さん
  • 明治大学文学部教授 齋藤 孝さん
  • マラソンランナー 谷川 真理さん
  • 数学者 秋山 仁さん
  • TVキャスター 草野 仁さん
  • サッカー選手 澤 穂希さん
  • ピアニスト 梯 剛之さん
  • 女優 竹下 景子さん
  • 食育研究家 服部 幸應さん
  • おもちゃコレクター 北原 照久さん
  • 宇宙飛行士 山崎 直子さん
  • 早稲田大学名誉教授(工学博士) 東日本国際大学副学長 エジプト考古学者 吉村 作治さん
  • 工学博士 淑徳大学教授 北野 大さん
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