金融教育に関する実践報告コンクール
第20回金融教育に関する実践報告コンクール(2023年)
応募状況および特賞・優秀賞受賞作品の紹介
第20回金融教育に関する実践報告コンクールでは、金融教育に関する提言、実践事例や実践計画などを募集しました。教員や教員を目指す学生の方等から35編の作品が寄せられ、厳正な審査の結果、特賞1編、優秀賞3編、奨励賞4編の入賞作品が決まりました。
今年度も、「学校で取り組まれた実践報告」「学校で取り組む予定の実践計画」「金融教育・金銭教育研究校および金融教育研究グループで取り組まれた実践内容」を募集テーマ例として挙げました。
入賞作品のうち、特賞と優秀賞3編の4編を紹介します。
特賞「起業体験の導入による金融教育のレベルアップ~衣類のアップサイクルに挑戦した小学5年生の記録~」は、前年の取り組みで見えた課題から検討を始め、「衣料のアップサイクル」をテーマに起業と商品開発に挑戦したものです。子供たちが14社を設立し、各々事業計画書を作成。銀行員にプレゼンして融資を受け、夏まつりで自分たちの企画した商品を販売。終了後には、事業報告書を作成し、報告・融資返済を実施するという実践事例を報告しています。「小学生にも無理のないテーマで、教科横断的な取り組みを行っている」「具体的で子供として参加していても面白いと思えた」「前年の取り組みから、きちんと課題を立てたうえでプログラムを修正するなど、発展性やPDCAがしっかりできている」「このような方法で課題を解決したということが論理的に書かれており、お金を借りて働いて返すというお金に関する活動を全てやっている」として高い評価を集めました。
優秀賞「5年2組みかづき会社」は、総合的な学習で扱うテーマを話し合う中で「会社をつくりたい」という子供たちの自発的なアイデアから始まった実践事例です。この実践では、お金や会社について学んだ後、学区内にある神社の例大祭に出店するための「会社」を経営することを通して、経済の基本を体験し、仕事の大変さ、お金の重みや仕事を自ら創造していくことの面白さを学んでいます。「タブレットを使って、何を総合的な学習でやりたいか、皆で議論して会社をつくり、校長先生に交渉して学校から融資を受け、儲けから返済するというストーリー性がある」「会社経営を手段としつつも、最終的に社会の仕組み等を実践的に理解させることを大きな柱としている」「外部資源を有効に活用し、とてもバランスの取れた報告」と評価されました。
優秀賞「消費者としての自覚をもち、 理想の消費生活を創造する生徒の育成~学校・地域・社会と連携した金融教育~」は、消費生活を多角的に捉え、自らに必要な知識、判断力、解決力を身に付け、自分らしい理想の消費生活を創造する生徒を育成することを目指した実践報告です。時事と関連させながら学習課題を提示したり、シミュレーション活動をしたりすることで、将来の消費生活を具体的に想像しながら思考力と判断力を身に付けるための実践を立案しています。「成年年齢引き下げ、フェアトレード等について正確な知識をもとに新しい情報を豊富に取り入れるとともに、修学旅行、家計シミュレーション、外部講師の講義など分かりやすい題材で授業に動きをもたせている」「他教科との連携により理解を深めるというアプローチに成功している」「定量的にアンケートを取りながら質的に内面がどうかわったかを把握するところが非常に分かりやすく、実践性が高い」と評価されました。
優秀賞「小学校段階におけるお金に関する概念をつくるカリキュラム~3年リユースショップ・4年クラファン・6年ビジネスプランコンテストの実践を中心に~」は、お金は目的を果たすための手段であることを理解してもらうため、金融教育プログラム「学校における金融教育の年齢層別目標」【改訂版】を参考にしながら、内容を作成して実践した事例の3つを報告しています。1つ目は「リユース活動を通して、値段を付けて売買することで物が循環していくことに気付く」3年生の実践。2つ目は「目的達成のための資金を得る方法としてクラウドファンディングを体験することで、投資や融資の前提には信頼や共感があることに気付く」4年生の実践。そして3つ目は「社会課題を企業が解決しようとするソーシャル・ビジネスに出会うことで、自分たちが社会を変える可能性を感じる」6年生の実践です。「お金の概念をしっかり整理したうえで、学年ごとの実践の成果を分かりやすく報告しつつ、学年の違いも含めた網羅的な研究報告にしている」「極めて実践的で、臨場感がある。生徒が手を動かしている過程がみえて先生の思いや生徒に向ける眼差しが伝わってくる」「外部人材の活用が効果的。子供自身が学習内容をコントロールしていくプロジェクト型学習という発想もユニークである」と評価されました。
今回のコンクールでは、学習指導要領の改訂を機に学校における金融教育が強化される中で、情報機器の活用、教科間連携や外部人材の活用を工夫しつつ、リユースやフェアトレードといった社会課題に取り組んだり、企業理念や事業計画の策定、融資と返済といった踏み込んだ内容を取り入れた起業を体験させるといった意欲的な作品が目立ちました。特賞、優秀賞を受賞された皆様の優れた作品が広く取り上げられ、金融教育への機運がより一層高まることを願っています。