金融教育に関する実践報告コンクール
第17回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2020年)
応募状況および特賞・優秀賞受賞作品の紹介
第17回金融教育に関する小論文・実践報告コンクールでは、「小論文部門」、「実践報告部門」の2部門で、金融教育に関する提言、実践事例や実践計画などを募集しました。教員、研究者、教員を目指す学生の方から24編の作品が寄せられ、厳正な審査の結果、特賞1編(実践報告部門)、優秀賞2編(小論文部門1編/実践報告部門1編)、奨励賞5編(小論文部門3編/実践報告部門2編)の入賞作品が決まりました。
小論文部門では「これから取り組んでみたい金融教育」「これからの時代に求められる金融教育」、実践報告部門では「学校で取り組まれた実践報告」「学校で取り組む予定の実践計画」「金融教育・金銭教育研究校および金融教育研究グループで取り組まれた実践内容」を募集テーマ例として挙げました。
入賞作品のうち、特賞と優秀賞2編(小論文部門1編/実践報告部門1編)の3編を紹介します。
特賞「地域や企業と連携して行う会社体験活動~12年間に及ぶ『天沼会社経営プロジェクト』の実践を通して~」(実践報告部門)は、地域と密着した長年に亘る会社体験活動を報告しています。「コミュニティスクールの指定を受けて、12年に及ぶ活動を展開されており、長い期間をかけて毎回改善されている。マーケティング、製造、販売の全プロセスを経て一つの製品を作り上げており、現代の会社組織の特徴である分業のメリットや収益を確保することの重要性などを小学生に実感させている。市場調査をしたり、中間発表をしたり、保護者や地域の方に審査員になって頂き、販売する商品を決定するという活動を続けている。12年間続いているということは先生が変わっても続けておられることが窺われ、そういった継続性の高さも素晴らしい」として高い評価を集めました。
優秀賞「大学生ベンチャーと商業高校が連携した『リアル投資教育』」(小論文部門)は、専門家の講義を受けた高校生が株式の銘柄を選定し、大学生のベンチャー企業が専門家の助言を受けつつ銘柄を再選定して株式を購入する、というスキームでの投資教育について報告しています。「実際に株式を購入している点がこれまでの取り組みと異なり、そのことによって切実なリスク認識や責任感が生まれている。先行研究を踏まえてチャレンジしている。特に、高校との連携により大学教育の改善に繋がりうるという点で良い取り組みである」と評価されました。なお、本作品については、「株式購入資金をだれが提供しているのかという点や、株価変動により生じる損失をだれが負担するかといった点が記載されておらず、全国に実践を広めるには課題が残されている」との意見が聞かれました。
優秀賞「えーひだカンパニーKidsの活動を通して比田の未来を考える~えーひだサマーフェスタ出店プロジェクト~」(実践報告部門)は、全校33名の小規模校で17名の高学年児童が伝統ある地域のサマーフェスタに参加するという取り組みを報告しています。「地域に根付いたカンパニーkidsの活動が高学年の責任感と自主性をうまく引き出している。下級生にとって高学年の活動が憧れの存在になっているという点が非常に良い。地元ケーブルテレビ用のCMを作るという活動の広がりと、地元の情報科の高校生の協力を得ることで地域との繋がりを深めている点が素晴らしい。さらに目指す子ども像が『物やお金を大切にする子』、『働く喜びが分かる子』であり、テーマが地に足がついていて他の学校にも真似して欲しい」と高く評価されました。
今回のコンクールでは、小学校で本年4月に全面実施されている新学習指導要領に明記された「現代的な課題に対応するための資質・能力」や「教科横断的な学習の重視」といった観点を十全に取り入れた力強い作品が多数寄せられました。特賞、優秀賞を受賞された皆様の優れた作品が広く取り上げられ、金融教育への機運がより一層高まることを願っています。