金融教育に関する実践報告コンクール
「金融教育を考える」第4回小論文コンクール(平成19年)
講評
「金融教育を考える」第4回小論文コンクールは、全応募作品25編の中から厳正なる審査を行った結果、特賞1編、優秀賞1編、奨励賞5編の入賞作品が決まりました。
特賞を受賞された「起業教育から金銭の多面的価値を考える~『株式会社 ナカちゃんプロジェクト』のCD販売を通して~」には、過半数の審査員から最高得点がつけられるという、素晴らしい作品でした。
たまたま地元の川に棲みついたあごひげアザラシの通称「ナカちゃん」を歌ったオリジナルソングをつくり、そのCDを製造、販売するという大変壮大なストーリーの記録です。
『株式会社 ナカちゃんプロジェクト』では、営業部、宣伝部、製造部をつくり、子どもたちはそれぞれの役割を見事にやり遂げました。販売したCDのラベルのデザインも子どもたちが考案し、また営業部の代表が市長に挨拶に行くなど、子どもたちの生き生きとした取り組みが目に浮かぶようでした。
やがてマスコミにもこの話題が取り上げられると、売上が拡大の一途をたどり、1カ月で約600枚を販売するという事実に驚かされます。さらに、その売上金の一部で車椅子を3台購入し、市の社会福祉協議会に寄贈しています。こういった社会的な還元も行われていて、非常に印象的な作品でした。
こうした実践的な活動を通じて子どもたちは、経済の仕組みを肌で感じたのではないかと思われます。これはまさに、生きた金融教育です。
優秀賞の「体験と実際のお金の取り扱い、使い方を組み合わせた本校の金融・キャリア教育構想」は、地域に根ざした生活科や総合的学習の改善を通じて金融キャリア教育の充実を図り、学校を挙げて年間計画として取り組んだ本格的なものでした。とくに学校と家庭・地域との連携、協働による独自の体験、またお金の取り扱い方を重視した金融教育を推し進め、働く喜びに結びつけたキャリア教育としても素晴らしい実践をされているところに大きな意義が認められました。
子どもたちが実際に栽培したり製作した品物を販売し、その収益を有効に使っていくという取り組み――こうした一連のプロセスを通じて地域の人々と交流する、体験に軸をおいたアクティブな活動を、審査員一同、高く評価しました。
この2つの作品に続いて、奨励賞5点が選ばれました。いずれも力作で、それぞれの取り組みは今回限りのものではなく、今後も何らかのかたちで引き継がれていくものであると思われます。受賞された皆様には、これを機に、さらに子どもたちの目の輝く素晴らしい教育活動を積上げられますことを期待しています。
金融教育は身近な素材から入り、子どもたちが楽しく生き生きと取り組むことが出来るかたちが望まれます。金融教育の実践を通じて、子どもたちが「生きる力」を身につけられることを願っています。