先生のための金融教育セミナー
2022年度 先生のための金融教育セミナー
オンデマンド配信の内容
現役教員による授業実践
「知的障害のある生徒の生きる力につながる金融教育を
~特別支援学校高等部家庭科におけるカリキュラムマネジメント~」
高知大学教育学部附属特別支援学校 安岡 知美 教諭
知的障害特別支援学校高等部で家庭科を教えています。調理のスキルを身につけさせる中で、予算を考えて食材を買うという行動に苦戦する生徒が多数いることが課題でした。消費者教育では、消費者トラブルとその対処法の学習が中心でしたが、将来の夢を持ち実現を願う生徒に必要なのは、お金を通して暮らしや社会、自分の生き方を考える金融教育ではないかと思い、実践に取り組むことにしました。
そこで、家庭科のカリキュラムを見直し、まずはものの値段当てクイズを行いました。身近な食品の値段や光熱費の他、将来の夢の実現にかかる費用もクイズにしました。調理学習では買い物を多く取り入れるようにし、コロナ禍で校外に出られない時には、バーチャルの買い物学習を行いました。
また、特別支援学校を卒業後に就職した架空の主人公を設定し、初めての給料をもらってからのストーリーを作り、お金や社会について学べるようにしました。給料明細書を見せて、基本給と支給額が異なるという点に気づかせ、社会保険や税金の制度についても触れました。働くことは自分や会社のためだけではなく、社会のためにもなるということも生徒に伝えました。
さらに、電子マネーなどの様々な支払い方法、インターネットを利用した買い物、クレジットカードやローンなどについても扱いました。卒業後の自立した生活に向け、家計にはどんな項目があるか、それらにはどのくらいの金額がかかるのか、ひとり暮らしシミュレーションをしました。また、ライフプラン学習では、「お金の未来ノート」を作成し、収入と支出のバランスを考えながら、夢を何歳で叶えたいか、そのために毎月いくら貯金をしていくか生徒自身が決定しました。自分の夢を叶えるための「夢貯金封筒」と人生の思わぬ出費に備える「万が一貯金封筒」を作り、卒業時に生徒に持たせました。
特別支援教育は障害のある生徒の自立と社会参加を目指すものです。卒業してからの方が人生は長いです。人生100年時代を生き抜くためにも、本当の自立に向けて、お金を賢く使うスキルの育成が欠かせないと考えます。生徒の明日が豊かなものであるよう、これからも金融教育を特別支援教育の中で進めて行きたいと思っています。