金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
2.金融教育の目標と方法
(1)金融教育の目標
③ 金融教育の方法
ア.能力育成のための基本的視点
金融教育は単に知識を習得することだけが目的ではなく、それをこれからの社会生活や自分の生き方などにつなげていくことに大きな意味がある。そのためには、「知識を得る(知る)」こととともに、それを活用して「考える」こと、「関心をもつ」こと、「働きかける(行動できる)」ことが重要である。この4つの要素が有機的につながり合い、ステップを踏みながら総合化・高度化されていくことが必要である。ここでいう「知る」、「考える」、「関心をもつ」、「行動できる」とは、以下のような内容を指している。
- 「知る」
- 調べたり学んだりすることを通して知識を得る、感じる、見る、聞くなど児童生徒の中に第一次的に入ってくる知識や情報を入手することを指す。
- 「考える」
- 第一次情報をもとに「なぜ?」という問いを発して課題を発見するとともに、「どうしたらいい?」という問いに基づいて、学んだ知識を活用して主体的に調べる、話し合う、思考する、工夫する、解決の選択肢を提示するなどの活動を指す。
- 「関心をもつ」
- 知識と思考を土台にして、題材を「自分事」として捉え、関心と意欲を持続させながら、より広く、より深く知ろう、考えようとし、更に行動に繋げようとする内発的な誘因を指す。
- 「行動できる」
- 「意思決定する」ことの大切さを理解し、知識や考えたことを手掛かりに判断する、人や社会に働きかける、試す、法や制度を利用するなどの行動ができることを指す。この中には行動に対する反応や周囲への影響をしっかり受け止めて、次の対応を考えることも含まれる。
なお、学習指導要領で示された育成を目指す資質・能力との関係では、「知る」が「知識及び技能」に、「考える」が「思考力、判断力、表現力等」に、「関心をもつ」と「行動できる」が「学びに向かう力、人間性等」に、それぞれ対応する。
イ.実践上の具体的な工夫
学校における金融教育を効果的に行う上では様々な工夫が必要である。その主なポイントを挙げれば以下の通りである。
- <題材の選定>
- 教科等の学習で金融教育的内容を取り上げる場合は、児童生徒が知識や課題を身近なものとして感じ、調べたり、考えたりしたいと思わせるよう、児童生徒にとって関心の高い題材(新聞の記事や折り込み、地域の話題、スマートフォン、コンビニエンスストア、こづかいなど)を選んで教材化する工夫が必要である。
- <外部の情報や人材の活用>
- 上で述べた家庭の保護者や地域の人たちの協力に加え、関係機関や団体が提供する教材や講師派遣等の制度を活用することによって、教育現場の専門知識の不足を補ったり、教材作成の負担を軽減したりしながら、児童生徒を納得解へと導くための効果的な授業を組み立てることが可能である。
- <体験的な学習>
- 教科等の学習ではシミュレーションゲームや話し合い、ロールプレイなどを活用するほか、特別活動や総合的な学習(探究)の時間では、職場体験、模擬企業経営、ボランティア活動、学校行事の活用、買い物体験、見学など、興味・関心が持続しやすい学習とするため、いわゆる座学以外の様々な体験的な学習を、体系的・継続的に取り入れていくことが効果的である。
- <学校全体での取り組み>
- 金融教育は、各教科等の授業で幅広く取り上げることができるが、各教科、特別の教科 道徳、特別活動で指導する内容の範囲とレベルを明確にし、それを総合的な学習(探究)の時間につなげていくというように、計画的に進めていくことが望ましい。すなわち、「カリキュラム・マネジメント」の視点に立って、金融教育の全体計画を立て、教科等の間で分担・連携を図るなど、学校全体で取り組むことが大切である。