「おかねの作文コンクール」
第56回「おかねの作文」コンクール(中学生)(2023年)
講評
第56回「おかねの作文」コンクールに、全国の中学校から4,867編の作品が寄せられました。テーマは、おかねに関することであれば「自由」です。厳正な審査の結果、特選5編、秀作5編、佳作10編の入賞作品が決まりました。
中学生がお金に関わっていく中で、税金や寄付することの意味、お金の価値、自分の人生に役立つお金の使い方など、実際の体験・経験に基づいて、そこから紡ぎ出された作品が寄せられました。特選5編の概要を紹介します。
金融担当大臣賞「未来への希望を託して」の筆者の祖父は、筆者が3歳の時に難病指定の病気で亡くなりました。その後、筆者は、祖父の保険金や見舞金などを、祖母が「一日でも早く治療法を見つけ、今後悲しい思いをする人が一人でも減ってほしい」と治療法の研究をする大学の研究室に寄付していることを知り驚きます。さらに母親も「寄付する事で微力ながら研究を支援するだけでなく、自分たちの希望を託している」と祖母と同じように毎年寄付を続けていると知らされ衝撃を受けます。お金は欲しいものや必要なものを得るためのものと考えていた筆者は「自分ならどこに寄付をするのか」と考え、調べた末に弟を誘い、途上国の子どもの健康を支援するマンスリーサポートに月2,000円を寄付することに決め、家の手伝いなどをしてもらうお駄賃などを貯め、今も寄付を続けています。筆者は「誰かのための役に立つためだけにするのではなく、未来がこうなってほしいという希望も託している」ことを実感しています。審査員は「祖母や母親の話を通じ、お金の価値観が変わり、寄付という行動に結びつけている」「家族間でお金の話をすることの大切さを教えてくれる」「筆者なりの新しいお金の使い方や意義を見つけている」などと評価しました。
文部科学大臣賞「お小遣いも寄付も税金も」の筆者は、小学3年生の時から300円のお小遣いをもらっています。兄と一緒にそのお小遣いの中から、母の日と父の日にプレゼントして「ありがとう」と笑顔で言われた時の嬉しさは「満足感や充実感を伴うもの」と感じます。筆者はここから寄付、税金など「自分のお金の一部を誰かに託して使ってもらう制度」に思いをめぐらせます。震災復旧や保護犬に寄付をした時の「自分が役に立つことが嬉しい」と感じた経験を思い出すとともに、税金の使い道などに否定的な意見があることにも気づきます。環境汚染や地球温暖化、少子高齢化など「一人では手も足も出ない大きく深刻な問題をみんなで力を合わせて解決するために私たちは寄付をしたり、税金を納めているつもりです」と筆者はいいます。そのためには「相手を信用すること、相手に信頼してもらうことが不可欠」とし「信じている相手だからこそ自分の大切なお金を託せる」と考え、そして「自分と相手を信じて、正しいと思うことにお金を使う、必要だと思うことにお金を託し使い方を委ねる、ということを繰り返すことでこの社会はよりよく変わっていく」と結びます。審査員からは「自分も消費税を払っていることを認識していないといった部分はあるが、実体験に根差し、寄付や税金のことについて自分なりに調べたことを整理して文章化している。しっかりと自分の考えを述べている」と評価されました。
日本銀行総裁賞「未来につながる価値ある買い物」の筆者は、英語のスキルを高め、言葉のハードルを意識せずに様々なことに挑戦したいと思っています。手始めに英語検定に挑戦することを決め、参考書を購入。参考書が目に入ると「せっかく買った参考書を無駄にしたくない」と思い、前向きに取り組むことができ、英語検定には無事合格。手元の参考書が買った時よりも価値あるもののように思え、合格という結果を得られた経験は自信となり、その後の英語学習に対する意欲も高まったと筆者は述べています。筆者にとって、これまでのお金の使い道は、手に入れたいものの購入や、旅行などの体験をする「消費」でしたが、参考書を購入して活用し、英語検定に合格したことで、「自己投資」というお金の使い方を体験し、それが有益な使い方だったと実感します。筆者は「多種多様な使い方ができるお金だからこそ、何の考えもなしに安易に使ってしまうことは避け、できるだけ有効に使うことを心がけたい」と考え、さらに「そうすることが、より豊かで充実した人生を築くことに繋がる」といいます。審査員からは「この作品を書くことを通じて、お金の価値や意義、役割について筆者なりに新しい観点を持つことができた。筆者の成長も感じることができた」と評価されました。
日本PTA全国協議会会長賞「お金の価値は同じなのか」の筆者は、8,000円の服の購入を母に相談するも却下され、自分の部屋中のお金を集めます。集まった金額は2,458円で、次に、人気キャラクターのフィギュアなど不用品を売りますが756円にしかなりません。さらに家の手伝いをし、1,500円を集めます。そんな時、祖母から5,000円のお小遣いをもらい、筆者は早速お店に行き欲しかった服の試着をしますが購入しませんでした。「このお金を使う程欲しかったのかが分からなくなった」ためです。そのことを親に話すと「お金の価値は変わらなくても、お金の重みが変わったのよ」と言われ、お金を手に入れるための努力や、協力してくれた人の気持ちが、お金にプラスされたのだと感じます。そのお金で、家族と祖母のためにたい焼きを買い、「いつもよりおいしく感じたのは、そのたい焼きの味にも思い出という重みがついたからかもしれない」と振り返ります。祖母からの5,000円はポチ袋にしまってあり、筆者は「この5,000円を使ってもいいと思う物が見つかる日が楽しみ」と結んでいます。審査員は「お金の価値や物の価値は、自分の生き方や取り組み、努力によって変化する。このことをお金に関する学びに限らず全ての学びで感じてもらえるような作品であると感じた」と評価しました。
金融広報中央委員会会長賞「通帳が気づかせてくれたこと」は、貯金通帳を通じて経済の仕組みへの理解を深めたことが綴られています。筆者は祖父母からもらったお小遣いやお年玉を郵便局(ゆうちょ銀行)に貯金しています。通帳の残高は20万円を超えていますが、利息が見当たりません。父親に尋ねると「日本の金利は低いからね」と教えられ、郵便局の金利を自分で調べると年利0.001%でした。また、通帳に利息の記載がない理由を郵便局で聞くと、入金時期によってすぐに利息が付くわけではないことがわかり、さらに日本の銀行の金利はどれも大差がないと知ります。日本銀行が金融緩和政策を続けていることを学んだ筆者は、自身が一昨年アメリカから帰国した際、円安の影響でドルから円の両替で得したことを思い出し、為替レートや海外の銀行の金利にも興味を持ち調べます。「お小遣いを預けている郵便局の金利が、世界情勢や日本経済に大きく左右されていることに気づき、お金が少し身近な存在になった」と感じ、これから、お小遣いや将来得る賃金をどう増やしていくべきなのか「大人になる前に自分なりに勉強していきたい」と結びます。審査員からは「『ナゼ?』と思って調べてみるという姿勢に貫かれているのは素晴らしい」「中学1年生の純粋な興味・関心の高まりに好感を覚えた」などと評価されました。