金融教育プログラム ─社会の中で生きる力を育む授業とは─
(2023年10月改訂版)
『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』では、学校における金融教育をより効果的に進めるために、現場の先生方及び有識者の協力を得て、小学校、中学校、高等学校における金融教育の意義や目標、指導方法などを紹介しています。
2007年2月に発行し、2016年2月の全面改訂を経て金融教育の体系書として全国の学校でご活用頂いておりますが、その後、学習指導要領が改訂され、小学校、中学校、高等学校で実施されるに至っていることなどを受け、2023年10月に同要領に即して内容を更新しました。
改訂版本文のファイル(PDF 1,434KB)
目次
- はじめに
- サマリー
- 1.金融教育のねらいと基本的性格
- 2.金融教育の目標と方法
- 3.金融教育を支援する関係機関等の活動 <準備中>
- 4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
- 5.各学校段階における金融教育
- 6.指導計画例及び教材
- 資料
サマリー
以下は、金融教育プログラムのうち、総論部分といえる「金融教育のねらいと基本的性格」及び「金融教育の目標と方法」の要約である。金融教育の全体像を把握するためには、本サマリーを読んだ上で、「学校における金融教育の年齢層別目標」(図表4)を参照されたい。
図表4 学校における金融教育の年齢層別目標金融教育とは?
金融教育は、お金を手がかりに授業を進めることによって、子供たちが生活や社会に関わる知識や物事をより具体的に把握し、より深く理解すること、また、課題の発見や解決に取り組む上でも、その課題をより身近なものとして捉え、他人事ではなく自分の問題として、現実に即し、自分なりに工夫し、判断し、行動する力を養うことを目指している。
いま、なぜ金融教育か?
人は生活していく上でお金とは切っても切れない関係にある。したがって、金融教育は時代や社会の如何に関わらず生きていく上で必要となる基本的な教育である。さらに、キャッシュレス化や価値観の多様化といった生活環境の変化を受けて、改めて子供たちにお金をしっかり扱う能力や態度を身に付けることが求められている。また、少子高齢化や人口減少、ICT化の進展、これを受けた新たな金融サービスの提供など経済社会環境が大きく変化するなかで、これまで以上に、個々人が、経済社会の活性化に貢献するとともに、自らのリスクをしっかり認識し、情報を収集して、自己の責任で的確に意思決定していくことが必要とされている。
金融教育の意義と魅力
金融教育の意義は、①自立する力の育成と、②社会と関わる力の育成の2点に集約される。すなわち、①お金を通して生計を管理する能力を身に付け、それをもとに、将来を見通しながら、より豊かな生き方を実現するため、主体的に考え、工夫し、努力する態度を身に付けられること、そして、②金融・経済の仕組みを学び、働くことやお金を使うことなどを通して、社会に支えられている自分と社会に働きかける自分の両者を自覚して、社会に感謝し、貢献する態度を身に付けられることである。
さらに、金融教育の魅力は、ア.現実の社会と触れ合う機会を提供すること、イ.たくましい人間形成をサポートすること、ウ.将来への意欲や活力を生み出すことと整理できる。このような金融教育は、学習指導要領が求める「子供たちが、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、これからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにする」ことと軌を一にしている。
多面的な取り組みの必要性
金融教育の場としては、まず学校が挙げられる。社会に出る前の全ての児童生徒が、学校で意図的・体系的な教育を受けるからである。また、家庭における生活を題材とした教育も重要であるほか、地域の協力や専門家によるサポートも有益である。金融教育は、学校と家庭や地域社会との協働を得やすい教育領域といえる。
金融教育の目標と実践において念頭に置きたい視点
金融教育の目標は、下図の「生活設計・家計管理に関する分野」、「金融や経済の仕組みに関する分野」、「消費生活・金融トラブル防止に関する分野」、「キャリア教育に関する分野」に大別できる。図表4では、これらの分野の分野目標と年齢層別目標(256項目)に整理している。
また、実践においては下図中心部の①~④の視点を念頭に置くことが効果的である。
ただし、「金融教育」の名の下に上記の目標を纏めて教えることのみが金融教育ではない。様々な教科や関連する教育領域において、子供たちにとって身近な「お金」をテーマとして一貫性を持たせたり、身に付けた知識・技能を総合的な学習(探究)の時間において統合・発展したりするなど、カリキュラム・マネジメントを通じ、子供たちの発達の段階に応じて、金融教育の分野別目標、年齢層別目標の達成を目指すことが望ましい。