金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
5.各学校段階における金融教育
(1)小学校における金融教育
② 学習指導の工夫
ア.教材化の工夫
金融や経済の仕組みに関わる実社会の事例は、小学校の児童にとって複雑で抽象的であるものが多い。そこで、複雑で抽象的な事例を、単純で具体的な教材に置き換える必要がある。その際、児童の発達の段階を踏まえながら次の事項に留意することが大切である。
児童は実際の経済についての知識をほとんど身に付けていないことから、既有の経験を十分に生かすようにしたい。例えば、保護者とともに買い物に出かけた経験や、自分のこづかいで買い物をした経験、お年玉を預貯金した経験などをもとに教材化を図りたい。また、日常、児童が見聞きするテレビニュースやコマーシャル、webサイト等のうち適切で有益と考えられる情報も、教材化する際の有力な手掛かりとなる。
イ.学習活動の工夫
前述したように、金融教育に関わる事例はとかく児童にとって実感しにくい。もし教師主導型の授業を進めると、学級内で十分に理解できない児童も多く表出する。できるだけ学習活動を工夫して実感をもって理解させたい。
例えば、実際に家庭で頼まれた買い物をするために商店に出かける、金融機関に自分のこづかいを預貯金するなどして、実際のお金の流れについて身をもって体験することで、児童はお金の価値や役割、機能、扱い方などを学ぶことができる。
あるいは、総合的な学習の時間等において、学級や学年全体でお店やさんごっこのような活動を展開し、児童が実際に原料の仕入れ、品物の制作、値段の設定、販売活動、売上金の計算、利益高の算出、利益の活用法の考察などの活動を通して、経済の基礎を学ぶ活動も想定できる。その際、広告、店の家賃などを設定するなどして、より現実の世界に近づければ高学年児童にも適した学習活動とすることができる。
なお、金融教育での調べ学習で各企業や商店発行のパンフレットや新聞記事などを活用するだけでは、内容が難解で児童がポイントをうまく読み取れないことが多い。したがって、小学生向けの資料を購入したり、各企業・商店や自治体が子供向けに発行した資料類(またはwebサイト等で公表している資料類)を準備したりしておくことが肝要である。また、ICT端末の1人1台体制の整備を踏まえ、児童に端末を利用して調べ、考える学習を行わせることを前提に、分かりやすいwebサイトや、きっかけとなる検索ワードなどを用意しておくことも必要である。
ウ.発表などの表現活動の工夫
金融教育に関わる用語は、児童にとって日頃馴染みのうすいものが多い。したがって、調べたことや考えたことをもとに、作品などの成果物をつくる際には他の児童が理解できるような用語を使用するように指導することが大切である。それは、発表などの活動でも同様である。
しかし、児童は、言葉をやさしくしようとしてもとまどうことも多い。友人の発表を見聞して理解できなかったら、児童は学習内容に対して意欲や関心をもつことができない。時には、教師が概念をかみ砕いて、児童が分かりやすい言葉に置き換えて説明することも必要である。分かりやすくできるかどうか、教師の指導の工夫が期待される。
小学校で指導する際の用語の置き換えもこれからの課題である。「金融」や「市場」という言葉一つをとっても、小学校の児童に分かりやすく説明するには、どのような用語がよいか検討が必要である。