金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
5.各学校段階における金融教育
(1)小学校における金融教育
① 考え方と進め方
ア.小学校における金融教育の考え方と目標
小学校での金融教育は、家庭での教育やしつけ、保育所・幼稚園・認定こども園での教育や保育を踏まえて実施される。総合的な学習の時間を活用して金融教育を実施する場合を除いて、金融教育のための特別な時間が用意されているわけではない。金融教育は、特に関連している教科、特別の教科 道徳、特別活動を中心に、全教育活動を通じて推進するものである。
小学校における金融教育は、いうまでもなく中学校に継続、発展していく。小学校の教師は児童が進学していく中学校での金融教育の内容についても理解し、関連を図った指導を行うことが望ましい。
小学校の金融教育においては、例えば次のような目標が考えられる。これを踏まえて学年ごとの目標を設定することになる。
- 家庭や社会生活における消費、経済、貯蓄、労働などに関心をもち、お金の役割や働くことの意味についての基礎的な知識や技能を身に付けるとともに、望ましい消費生活や自己の将来設計の在り方を将来にわたって考えようとする思考力等及び意欲・態度を養う。
イ.小学生の発達の特性と金融教育
小学生の時期の児童は、お金を使って買い物をしたりサービスを受けたりする経験はあるものの、お金のもっている意味や価値、お金の得方などについては必ずしも十分に理解していない。もっている知識もばらばらの状態で、体系化されたものにはなっていない。またお年玉などを預貯金した経験は多くの児童がしているものの、金融機関に預けたお金がどこでどのように活用されているのかについての知識はほとんどもちえていない。
小学生の時期は成長や発達が著しく、低学年、中学年、高学年の発達の特性を踏まえ、それぞれの発達の段階や発達課題に即した系統的な指導が重要になる。その際、児童がお金に関わる経験や体験、知識や技能を徐々に身に付けていくことに歩調を合わせて、各教科等においてもお金や金融、働くことの意味など金融教育に関わる内容について学習を積み重ねていけるように、実生活での経験の度合いと各教科等の指導内容との関連を十分に図りながら実践することが求められる。
ウ.各教科等における金融教育の進め方
小学校の教育課程は、各教科、特別の教科 道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動から構成されており、金融教育と指導内容面で深く関わっている教科等と、教材や題材、学習活動等のレベルで関わりをもたせることができる教科等がある。それぞれの教科等には、固有の目標や内容が定められており、実際の指導場面においては、総合的な学習の時間を除いて、指導の過程に「金融教育の視点」を位置付けて実践することが現実的である。総合的な学習の時間においては、目標や内容も含めて金融教育を重点的に実施することが可能である。
小学校において、特に関わりの深い教科等は、社会科、生活科、家庭科、特別の教科 道徳、総合的な学習の時間、特別活動(学級活動や学校行事)である。これらの教科等においては、金融教育と関わらせながら指導の目標や内容を設定することが可能である。一方、国語科や算数科、図画工作科などの教科では、教材や題材、学習活動などの面で金融教育の視点を盛り込んで実践することができる。
各教科等の学習で身に付けたお金や金融に関する内容等を相互に関連付けながら、児童が総合的な理解と関心を深めるようにしたい。総合的な学習の時間に金融教育を課題として取り上げ、教科等で身に付けたこととの関連を図りながら総合的に学習する場を設けることが、極めて重要な意味をもつ。そこでは、お金や金融についての理解や関心を促すための体験的な学習や問題解決的な学習が一層ダイナミックに展開できる。
小学校では従来、学級担任が殆どの教科等を指導しており、上述の教科間の関連付けが行いやすかった。一方、2021年の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」を踏まえ、教科担任制の導入が進んでいる。教科担任制の場合、金融教育を介した教科間の関連付けがなされるよう、教師の意思疎通・共通認識が一層重要になる。