金融商品なんでも百科
(平成27・28年用)
ライフプランにあった金融商品を選ぶ方法
ライフプランにあった金融商品とは
バランスシートで資産負債のバランスを分析する
金融商品を選択する前に、まず資産負債の現状分析をしましょう。そのために資産と負債のバランスシート(Balance Sheet:B/S)を作ってみましょう。
1.金融資産(A) | 合計603万円 | 22.8(%) | 3.負債(C) | 合計2327万円 | 88.1(%) |
---|---|---|---|---|---|
普通預金 | 73万円 | 2.8 | 住宅ローン(銀行) | 2297万円 | 87.0 |
定期預金 | 400万円 | 15.2 | |||
財形 | 30万円 | 1.1 | |||
他貯蓄系 (養老保険<解約返戻金>)
|
|||||
自動車ローン | 30万円 | 1.1 | |||
投資系(株式投信) (株式)
|
50万円 | 1.9 | その他ローン | ||
50万円 | 1.9 | ||||
2.実物資産(B) | 合計2037万円 | 77.2 | 4.純資産(D) | 313万円 | 11.9 |
建物 | 800万円 | 30.3 | |||
土地 | 1167万円 | 44.2 | |||
自動車 | 70万円 | 2.7 | |||
資産合計=A+B | 2640万円 | 100 | 負債・純資産合計=C+D | 2640万円 | 100 |
バランスシートの作り方
年末や3月末といった一定時点の資産と負債の時価をこの表のように書いていきます。預金は通帳の残高、投資信託や株式はその日の終値を書きます。建物や土地については、近隣の不動産会社で売却時価がどのくらいか聞いてみます。自動車も中古でいくらぐらいの売却価値があるか中古自動車のセールス会社に聞いてみます。また養老保険や学資保険あるいは個人年金など貯蓄性のある保険については、その時点で解約したらいくら解約返戻金が出るかを保険会社に聞いて記入します。
住宅ローンや自動車ローンそしてクレジットカードの未決済残高も記入します。
バランスシート分析のポイント
次の点をチェックしてみてください。
- 資産合計が負債合計よりも大きいか。
- 資産に占める実物資産、特に不動産の割合はどの程度か。
- 住宅の資産価値は年々減っているか、それに対し住宅ローンの減り方は少ないか。
- 金融資産に占める貯蓄系資産と投資系資産の割合はどうなっているか。貯蓄が多すぎないか。投資系資産が多くて必要以上に価格変動リスクをとっていないか。
日本人の個人のバランスシートは、今までは一般に資産に占める不動産の割合が最も多く、それに預貯金で大半を占めていました。最近は不動産、特に地価は、資産価値が増える場所と減る場所の二極化が進んでいる傾向にあります。また人によっては住宅ローンやその他のローン残高がかなり大きいケースもあります。そうした場合は、預貯金の一部を取崩して住宅ローンの繰上げ返済を行うことも必要です。ですから年に一度は、こうしたバランスシートを作って、資産と負債の全体としての状態を把握し、資産と負債の内容の見直し、金融商品の見直しをしておくことがとても大切になっています。
金融商品保有の目的
あなたが金融商品を保有する目的を考えてみましょう。
保有する資金は、ライフプラン上の目的から、次のような4つのタイプに分類されます。4つのタイプの資金の性格は、それぞれ異なります。
準備資金 | 突発的な支出への備え、病気・災害への備え、納税準備資金 |
---|---|
短期資金 | 旅行・レジャー資金、耐久消費財の購入資金、数年以内の結婚資金 |
中長期資金 | 期間がある程度長い子どもの教育資金や老後生活資金 |
利殖資金 | 余裕資金で増やすことを目的とするもの |
資金の性格
準備資金
誰しも将来のことを前もって見通すことはできません。そこで、将来に備えて、一定額の準備資金を用意することが重要です。これを緊急時資金とも呼んでいます。
この目的で使う資金は、支出のタイミングをあらかじめ決めにくいという特徴があります。このため、現金化したいと思ったときに、簡単に手数料なしで現金化できることが大切です。不時の出費に備える資金は流動性が重要です。
「将来は何が起こるかわからないから」と、できるだけ多くの資金を準備しておきたいと思うかもしれませんが、準備資金を必要以上にもつことは、効率的な運用の面では得策ではありません。いざというときに必要になった金額の過去の実績や、安心を感じる金額を見通して、一定金額を取っておき、残りは他の短期資金や中長期資金に回すほうが効率的です。また突然の支出で高い金利を払ってお金を借りることのないようにするためにも、準備資金を持っておくことは大切です。
病気・災害への備え
次の項目について、どのくらいあれば、一応安心かを考えてみましょう。
- けがや短期間で退院できる病気の費用
- 不測の事故などがあった場合の費用
- 長期入院を要する病気になったり、家族の介護が必要な場合の費用
- 地震・洪水・津波などが発生した時、数日間(数か月間)暮らしていける資金
病気・ケガの場合は民間の医療保険に加入しているかどうか、健康保険などの公的医療保険でどの程度カバーされるかを確認し、手持ち資金がいくらか検討し、その結果、「どれだけ準備していれば一応安心できそうか」と考えてください。
失業など
雇用保険加入者は一定の条件にもとづいて失業時に基本給付が出ますが、それだけでは生活資金に十分ではありません。また自営業の人には雇用保険はありません。そこで一般的には月間生活費の6か月から1年分程度の資金を持っておくとよいといわれています。
その他の突発的な支出
病気・災害などのほかにも、お葬式など冠婚葬祭行事への出席、家電製品・自動車の故障の修理など、あらかじめ予想できない突発的な支出があります。そうした予想外の支出がまかなえるように準備しておきます。
突発的な支出への備えの目標額は、たとえば家計簿の記録をもとにして、年間で最も支出の多い月と平均的な月間支出額の差額を算出する方法があります。
短期資金
短期資金は数年以内に起こると予想されるライフイベントなどに備えて準備する資金ですから、保有額が予定されていた金額よりも減ってしまうと、予定していたイベントが実現できなくなります。たとえば、3年後に予定している住宅取得のための頭金をハイリスクの金融商品で運用していて3年後に大きく元本割れした場合、その不足分もローンを組まなければならなかったり、取得をあきらめたりということがあり得ます。そのため、短期資金は安全性を重視して選ぶことが必要です。
旅行・レジャー資金
旅行・レジャーに際しては、定期的に一定額(たとえば毎月1万円)を一定回数積立し、その後積立額を使うという仕組み(旅行積立)があります。
耐久消費財の購入資金
これは購入したい自動車や家具の価格を目標額の基準とします。ただし、実際に買うときになると、やや背伸びして高いものを買ってしまう傾向がありますから、実際の価格よりも少し多めの金額を目標額に設定するというのも1つの方法です。
中長期資金
中長期資金は、一般に5年を超える先に起こると予想されるライフイベントに備えて準備する資金で、ライフプランに必要な三大資金である教育資金・住宅資金・老後資金は、この資金に入ります。中長期資金は、期間があるので、リスク許容度を考え収益性と安全性を組合わせて運用していくことが可能です。たとえば、15年後の子どもの大学教育資金について、一部は自動積立定期や学資保険・子ども保険など安全性が高い金融商品で運用しつつ、一部は投資信託で積立投資をしていくという方法が考えられます。また、30年後の老後資金という場合は、収益性部分を多めにし、その部分を投資信託や外貨建ての金融商品で運用することも考えられます。
中長期資金でのリターンの追求は、「投資」によって行います。投資は、基本的に株式や債券のほか預貯金などの短期金融商品の組合わせによってリスクを分散し、経済環境によって株式や債券の比重を変化させながら、長期的に運用して期待されるリターンを達成する方法です。中期の場合は、公社債投信や利付き国債などを、長期の場合は、株式投資信託や外貨建て証券、あるいは複数の株式や債券なども含めた運用が考えられます。ただ、この場合にも、各人が先に述べたリスク許容度をよく考え、体力に応じた無理のない範囲でリスクをとることが必要です。
利殖資金
誰しも、保有した金融商品からなるべく大きな収益が得られることを期待します。しかしハイリターンを追求するには、資金が大きく減るかもしれないハイリスクを覚悟しなくてはなりません。自分の体力でハイリスクをとれない場合は、利殖は控えましょう。そうでない場合でも、減っても困らないように、利殖に充てる資金は純粋な余裕資金が中心となります。
利殖資金での資金運用は、「投機」と言われています。投機とは、機会つまりチャンスにお金を投ずることです。特定の株式を安く買ってタイミングをみながら高く売り抜け値上がり益を得るという短期売買の方法となります。ハイリスクになるので、資金を一定額に限定したり、許容できる損失金額の上限を設けて、損失がその金額に到達した時点でその商品による運用から撤退するロスカット・ルール(損切りルール)を設定することは有効です。
貯蓄の目的 | 資金の性格 |
現在高/目標額 (万円) |
|
---|---|---|---|
病気・災害への 備え 日常生活資金 |
準備資金 |
100/100 40/40 |
<過去の実績> 日常生活資金(昨年平均35万円/月) |
旅行・レジャー 資金 耐久消費財の 購入資金 子どもの教育資金 |
短期資金 |
10/10 10/10 0/180 |
<過去の実績> |
住宅購入・増改 築資金 老後の生活資金 |
中長期資金 |
800/2800 0/2500 |
10年後(10年間×200万円) 20年後(20年間×125万円) |
できるだけ殖や したい |
利殖資金 | 200/ - |
<過去の実績> 昨年上期+10万円、昨年下期+5万円 |
借入をする際の留意点
ライフプランの実現においては、借入をすることも考えられます。
住宅ローンを組むことは一般的ですし、教育ローンも組むこともあります。住宅ローンについては、過大な金額にならないようにし、変動金利・固定金利・固定金利期間選択型など金利タイプの選択をよく考え、しっかりした資金計画とシミュレーションを行って借りるようにしましょう。教育ローンについても、奨学金が借りられないかどうか、日本政策金融公庫など準公的機関の低利のローンが借りられないかなどを考え、それから民間金融機関の教育ローンの検討をしましょう。
短期資金が不足してローンを組まざるを得ないことがあるかも知れません。例えば自動車ローンや消費者金融などからの借入やキャッシングです。こうした場合は、過大に借りることなく、できるだけ低利のローンを選択しましょう。例えば金融機関に定期預金を作っておけば、定期預金を担保に低利で借りられるローンがあります。無担保のローンは金利が高いので、まず貯蓄して定期預金などを作り、それを担保にローンを借りるといった工夫をしましょう。
多重債務問題
安易に貸金業者などからお金を借りて返せず、また別の業者から借りて返すことを繰り返しているうちに、多重債務に陥る人が増えています。多重債務とは、複数の業者からお金を借りることをいい、多重に債務を負っている人のことを多重債務者といいます。多重債務者は、返済の目処が立たない場合がほとんどであり、その場合、多重債務を整理する必要があります。
多重債務者が弁護士や認定司法書士などに債務整理を依頼し、受任通知がでれば、貸金業者の取り立ては止まります。債務整理では、まず利息制限法に基き制限利息を超過する部分について利息無効として、引き直し計算し債務額を確定します。これにより大幅に債務額が減るケースが多くなっています。
さて債務整理には次の四つの方法があります。
- 任意整理―金額がそれほど多くない場合は、弁護士などに依頼し貸金業者と直接交渉して、弁済につき和解交渉を行います。
- 特定調停―簡易裁判所で調停委員が和解交渉をあっせんするものです。
- 個人再生―地方裁判所に申し立て、原則として債務の一定額を3年間で返済する計画案が認可され、その通り返済すれば、残債務の免除が受けられます。
- 自己破産―以上の3つの方法で困難な場合などは、地方裁判所に自己破産の申し立てをし、免責許可決定を受ければ債務支払い免除となります。
どの方法を選択するかは、弁護士等専門家とよく相談する必要があります。したがってまずは弁護士会・司法書士会・消費生活センターなどに相談してください。