金融商品なんでも百科
(平成27・28年用)
ライフプランにあった金融商品を選ぶ方法
ライフプランを立てよう
金融商品は、あなたの生活設計つまりライフプランを実現するための道具です。将来住宅を買いたい、子どもを大学に行かせたい、田舎で豊かな老後を送りたい、といった生き方のデザイン、つまりライフデザインに応じて、生活の具体的なプランを立てていくことがライフプランです。
最近の日本人のライフデザインは多様になっています。共働きで子育てする世帯が普通になっていますし、シングル、ディンクス(duble income no kidsの略で、夫婦2人分の収入があり子どもがいないこと)、夫が働いて妻は家事・育児に専念する、今は会社員だが将来独立して会社を起こすなど、さまざまなライフデザインがあるので、それにもとづくライフプランも人それぞれです。まず大切なことは、こうした多様なライフデザインを実現するために、具体的なライフプランをしっかり立てることです。
そして、ライフプランに基づいて資金計画を立てていくことをファイナンシャル・プランニング(FP)と呼んでいます。そして金融商品の選択はファイナンシャル・プランニングに含まれています。ですから、金融商品を上手に選ぶためには、あなたのライフデザインとそれにもとづくライフプランを明確にして、さまざまなライフプラン上の資金目的を確かめて、それにふさわしいタイプの金融商品に絞って選んでいくことが、大切です。
ライフプランを考えると、まず大切なのは、緊急時の資金を準備することです。特に最近は気候変動により、豪雨や豪雪、強力な台風や津波、地震など災害が多発しています。こうした時に備える「準備資金」を真っ先に準備しましょう。その上で、中長期の資金計画として、大きな金額を必要とするいわゆる三大資金、つまり「子どもの教育資金」や「住宅取得資金」そして「老後資金」を考えましょう。人によっては教育資金はいらないとか、一生賃貸住宅でいいので住宅取得資金は必要ないといったことがあります。ただし、どのようなライフデザインであろうと老後は必ずやってくるので、老後資金はすべての人にとって必要です。しかも、公的年金の受給額低下傾向に伴って「老後資金」をどう作っていくかは、大切な問題です。住宅に大きなお金をまわしすぎて老後資金が不足したりしないように、まずは具体的に将来必要とされるさまざまな資金を見積もって、将来のイベントを迎えるまでの計画を立ててみます。
ライフプランを作る — 将来のイベント予想
まず、あなたがどんなライフデザインを持ち、人生の中でどのライフステージにいるかを確認します。どんなライフデザインをとるかで具体的なライフプランとそのイベントは変わってきます。あなたに小さな子どもがいれば、学校に通い始める時期に「子どもの教育資金」を用意する必要があります。あなたが社会人で、専門職大学院などに通って専門的知識を身につけキャリアアップしたいのであれば、「自分の教育資金」を用意しなければなりません。また、5年後に住宅を購入する希望をもっていれば、今から「住宅購入資金」の準備をしておかなくてはなりません。また、50代で定年前に住替えしたいのであれば、やはり住宅買換えのための資金が必要になります。
そこで、資金計画の基礎となるあなた自身のライフプランを描いてみましょう。
資金計画 — ファイナンシャル・プランニング
あなたのライフプランが描けたなら、プランに沿って予定するイベントで必要となる予想支出額を設定します。それから、必要となる予想支出額を、イベントを迎えるまでの期間の年数で割って、毎年積立てておくべき金額を見積もります。
立案した資金計画は、毎年随時見直しして、計画と実績をチェックするとよいでしょう。計画よりも予想以上に資金が貯まっていれば、その資金を別の支出にあてたり、より余裕をもった資金計画に組替えることができるようになります。
年齢 | イベント | 支出・収入 | |
---|---|---|---|
夫28歳・妻26歳 |
結婚 |
年収 | 479万円 |
29歳・ 27歳 | 出産 | 出産費用 | 45万円 |
35歳・ 33歳 | 公立小学校入学 | 教育費 | 年間29万円 |
41歳・ 39歳 | 公立中学校入学 | 教育費 | 年間48万円 |
43歳・ 41歳 | 住宅購入 |
購入費用 頭金 借入金 |
2,586万円 789万円 1,797万円 |
44歳・ 42歳 | 公立高校入学 | 教育費 | 年間53万円 |
47歳・ 45歳 | 私立大学入学 | 教育費 | 年間130万円 |
58歳・ 56歳 | 子供結婚 | 結婚費用 | 186万円 |
60歳・ 58歳 | 定年 | 退職金 | 2,402万円 |
65歳・ 63歳 | 年金支給 | 厚生年金支給 | 年間206万円 |
67歳・ 65歳 | 妻の年金支給 | 国民年金支給 | 年間79万円 |
ここでの例示は、1つのパターンにすぎません。より詳しいデータを探す際には、当委員会の発行する「暮らしと金融なんでもデータ」を参照してください。また、その一部はホームページでも掲載しています。
年代別の資金計画のポイント
ライフプランもそれに見合う資金計画も年代によって異なってきます。人の生き方はさまざまですが、一般的な年代別の重視すべき資金は次のとおりです。
20代
経済的自立のために就職し、一人暮らしを始める時期です。仕事の方向性・キャリアプランや結婚などのことを考えつつ、まずは経済基盤作りのために、安定的な収入を得て、毎月定期的な積立て貯蓄をすることが大切です。30歳までに数百万円程度の資金ができれば、その後の人生の選択肢が広がります。結婚する場合はその資金準備をしましょう。保険は医療保険と自動車保険を中心に考えましょう。
30代
30代で住宅購入をする場合、まとまった頭金の準備の他に、住宅ローンを借りるのが一般的です。また結婚資金や、子育て費用、教育資金も必要になることが多いでしょう。転勤や転職なども考えられます。子どもが生まれたら生命保険で大きな死亡保障を確保することも必要になります。
40代
子どもが中学・高校・大学と進学し、教育費負担が重くなってきます。特に私立に行く場合は資金が多く必要です。住宅ローンを退職時までに払いきるために、繰上げ返済を行うことも考えられます。また、両親の病気や介護の問題や相続の問題も視野に入ってきます。自分の老後資金準備も始めることが必要です。
50代
子どもの教育資金がピークとなり、終わりが見えてきますが、子どもの就職が気がかりです。老後資金準備の最後の段階で、綿密な老後のプランが必要になります。両親の病気や介護あるいは相続といった問題も多く発生します。保障は死亡保障から医療保障中心へ見直しをする時期です。
60代以降
会社員の方は定年退職し、退職金や企業年金が入る場合が多いと思います。老後を考え、住宅の増改築や転居などの住宅資金、子どもの結婚援助資金、老後生活資金や、趣味などゆとり資金も視野に入れます。さらに介護・病気に対する準備と医療保障、相続に関する準備も考えましょう。意思決定能力がなくなった場合に備えて、任意後見制度の活用を検討しておくことも視野に入れておきましょう。
ライフデザインと資金計画
資金計画を立てる場合は、あなたのライフデザインにも注意することが大切です。事例をいくつかご紹介しましょう。
シングル
シングルですと、結婚資金や子どもの教育資金は必要ありません。しかし老後資金はしっかりと準備することが大切です。また住宅購入の場合は、頭金が必要です。生命保険については、一般に大きな死亡保障は要りません。むしろ医療保障を充実することが大切です。
ディンクス
夫婦共働きで子どもがいないディンクスの場合、子どもの教育資金は必要ありませんし、妻も働いているので、夫の死亡保障額もそれほど大きくなくていいでしょう。老後資金を計画的に準備すること、そして医療保障をしっかり確保するように注意してください。
共働き
住宅資金・教育資金・老後資金とフルに資金が必要です。共働きで注意すべきは妻の死亡保障です。収入のある妻が死亡した場合、公的年金からは遺族基礎年金が出ず、また夫の年齢が55歳以上でないと遺族厚生年金も出ません。したがって妻の死亡保障をきちんと確保しておくことは大切です。
高齢者の資産管理と日常生活自立支援事業
高齢になり、足が悪くなって銀行に頻繁にいくことができない、ときどき物忘れがある、といった場合、日常的な金銭管理サービスなどをしてくれる日常生活自立支援事業という制度があります。地域の社会福祉協議会が行っているもので、自治体に問合わせれば教えてくれます。この事業は、資産管理について、次の二つのことをしてくれます。
日常的金銭管理サービス
年金の受給手続き、税金・公共料金・医療費・家賃などの支払い、日常生活に必要な預貯金の払戻し・預入れ・解約の手続きなどを行う
書類などの預りサービス
年金証書・通帳・権利証・契約書類・保険証券・実印・銀行印などを金融機関の貸金庫などに保管する
このサービスを受けるためには社会福祉協議会などにまず相談してください。その際本人に契約を締結する能力があることが必要です。またこのサービスを受けるのに一定の費用がかかります。同居の家族がいてもかまいませんし、遠くに住むお子さんが母親の金銭管理について相談しにくることもあります。専門員が対応し、秘密厳守で支援計画を作成します。
ただし日常的な生活援助の範囲を超えた問題、たとえば不動産の売却、施設入所の代理契約などはできません。また専門員に同意権や取消権がないために、悪質商法などの財産侵害に対して、完璧に利用者を保護することは困難です。
高齢者の資産管理と成年後見制度
成年後見制度とは、高齢になり、認知症や知的障がいなどのために判断能力や意思決定能力が不十分な人(成人)を支援し、その権利を擁護し財産を適正に管理するために後見人等を置く制度です。高齢になり資産に関する自己責任がとれなくなった場合に備えて、よく知っておくべき制度です。これには「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
法定後見制度
認知症・知的障がいなどにより判断能力が現実に不十分な人を保護する制度です。その程度に応じて重いほうから、後見・保佐・補助の3類型があります。
- 後見
- 常に判断能力を欠く人に対して後見人を選任し、財産に関するすべての法律行為について代理権と取消権が付与されます。ただし、日用品の購入、その他日常生活に関する行為は本人の判断に委ねられます。
- 保佐
- 判断能力が著しく不十分な人に対して保佐人を選任し、元本の領収・利用、不動産など重要な財産の得失を目的とする行為などについての同意権・取消権が付与されます。
- 補助
- 判断能力が不十分である人に対して補助人を選任し、個別の審判により、当事者が申し立てにより選択した「特定の法律行為」についての同意権や取消権を付与します。また本人の申し立てにより代理権を付与することもでき、本人に代わって預貯金の出し入れ・介護契約ができます。
任意後見制度
将来、精神上の障がいによって判断能力が不十分になる場合に備えて、自ら選んだ任意後見人に生活・療養看護・資産管理に関する事務の全部ないし一部について代理権を付与する委任契約です。任意後見契約は公正証書で行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときからその契約の効力が生じます。
障がい者向け優遇措置
障がい者の方に対して、次のような金融に関わる制度や商品の控除・優遇・割引などの措置がされています。これらの知識を身につけて、十分に活用することは障がい者の権利でもあり、大切です。主なものは次の通りです。
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公的年金の一つである障害年金の所得税非課税制度があります。
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所得税の所得控除―障がい者である場合は27万円の障害者控除、身体障害者手帳で障がいの程度が1級または2級とされる方などの場合は、40万円の特別障害者控除が適用されます。
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障害者等のマル優制度―障がい者などの場合、預入れた金額が次の金額までは利子又は収益分配金に対する所得税が非課税となります。
(1) 元本350万円以下の預金・社債・投資信託
(2) 元本350万円以下の公債
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相続税の障害者控除―相続人が85歳未満で障がい者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引けます。障害者控除の額は、その障がい者が満85歳になるまでの年数1年(年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。)につき6万円で計算した額です。この場合特別障害者については1年につき12万円となります。
なお、障害者控除額が、その障がい者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引ききれない場合は、その引ききれない部分の金額をその障がい者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
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特定贈与信託―特定贈与信託は、特別障害者のために家族など(個人)が、特別障害者を受益者として財産を信託(特別障害扶養信託契約)し、特別障害者の方の生活の安定と療養の確保をはかる制度です。受益者一人につき6,000万円を限度として贈与税が非課税になります。万一、両親などの扶養者が亡くなられた場合でも、特別障害者の生活費や養育費が信託財産から定期的に交付されます。
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事業税非課税―失明等の状態で、はり・きゅう・マッサージ・あんまなどの事業を営む場合、事業税が非課税になります