やさしいデリバティブ
デリバティブの起源
デリバティブは、最先端かつ超難解な金融技術のようなイメージがあります。
ところが、意外にもデリバティブの起源は古く、江戸時代、さらには古代ギリシャ時代にもさかのぼるといわれています。
デリバティブの説明をはじめる前に、まずは、はるか昔のデリバティブ取引を見てみましょう。
デリバティブそもそも ~デリバティブの起源をさかのぼれば~
古代オリーブ絞り機
古代ギリシャの哲学者ターレスは、ある年、天文学の知識をもって翌年のオリーブが豊作となることを予見し、オリーブの絞り機を借りる権利をあらかじめ買っておきました。
その翌年、ターレスの見込みどおりオリーブは豊作となり、オリーブ搾り機の需要は拡大し、借入料は上昇しました。
そこでターレスは、オリーブ絞り機を約束どおりの値段で借り入れ、自分が借り入れた値段より高い値段で人々に貸し出すことで、大きな利益を手に入れたといわれています。
これは現在のデリバティブでいえば、オリーブ絞り機のオプション取引ともいえるものです。
オプション取引
このように、はるか昔にデリバティブ取引の萌芽(ほうが)を見いだすことができます。
大阪堂島の米市場
日本に目を転じてみましょう。
時は江戸時代、大阪は堂島。米商人たちの間で、米の売買価格を収穫前にあらかじめ決める取引(「帳合(ちょうあい)米取引」とよばれます)が行われていました。
米の価格というのは天候、天災などの要因で常に変動します。米商人たちは、その価格を安定させたいと考えたのです。
そして、この帳合米取引によって、あらかじめ米の売買価格を決めておくことで、思わぬ相場の乱高下が起きて損をするかもしれない、という不安を取り除くことができたのです。いわば、米商人たちのリスクヘッジです。
さらに、米の値上がりを見越して買い付けておいたり、米の値下がりを見越して売り付けておいたりするなど、取引を利用して利益を狙う参加者も現れました。
現在のデリバティブの1つである先物取引の原型ともいえる取引が、18世紀の日本で行われていたのです。
先物取引
ようこそ「デリバティブ」の世界へ
哲学者ターレスのオリーブ絞り機にしても、江戸時代の米取引にしても、時代・社会は違えども、わたしたちの生活からかけ離れたものではなく、デリバティブの根本は常識で理解できるものです。
デリバティブは、必要から生まれた知恵が、時代を経て、現代の新しい金融取引としての地位を確立し、そして今も日々進化しているのです。
さっそく、デリバティブとはどのようなものか、デリバティブの世界をのぞいてみましょう。