金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
1.金融教育のねらいと基本的性格
(1)金融教育とは?
金融教育は、「金融」という言葉が独特の響きをもっているために、入り口の段階で敬遠されてしまうきらいがある。例えば、「内容が専門的でとっつきにくい」、「資産を増やしたり儲けたりすることばかり教えるのは、子供たちの健全な心の発達を歪める危険がある」などの声に代表される。しかし、学習指導要領が求めている「生きる力」(すなわち、「社会の変化に受け身で対応するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、自らの可能性を発揮し多様な他者と協働しながら、よりよい社会と幸福な人生を切り拓き、未来の創り手となる」力)を育成するには、「学校での学びを日常生活で活用したり、ご家庭での経験を学校生活に生かしたりすること」(文部科学省HP)が大切であると考えられていることを踏まえれば、金融教育は、以下に示すように「生きる力」を育む有効な手段を提供できる教育である。
金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会の在り方について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に判断し行動できる態度を養う教育である。
子供たちが自分の生活や社会について考え、生き方や価値観を作り上げることは教育全体の大きなテーマである。それを実現するための方法は多様であり、金融教育だけがそれを担うものではない。しかしながら、お金を手がかりに授業を進めることによって、子供たちは生活や社会に関わる知識や物事をより具体的に把握し、より深く理解することができる。また、課題の発見や解決に取り組む上でも、問題をより身近なものとして捉え、他人事ではなく自分の問題として、現実に即し、自分なりに工夫し、判断し、行動する力を養うことができる。このように、金融教育は子供たちに、現実の生活や社会に足場を置いてしっかり考える力を身に付け、たくましく生きる力を養わせる上で大きな利点をもっている。