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平成25年度 春期研修会

2.講義

「金融教育を切り口にした生活設計・ライフデザインの指導」
東京家政学院大学 副学長・教授 上村 協子 氏

金融教育といっても大上段に構える必要はありません。これまでの家庭科教育で行ってきた、生活者としての能力を広げるための教育を再編すれば、生徒の生活設計力、ライフデザイン力を育むことにつながります。

金融広報中央委員会の『これであなたもひとり立ち』は、教師用の指導書も含めてデータがこまめに改訂されており、使いやすい教材です。私も大学の授業で学生に生徒用教材と指導書の両方を配布し、高校家庭科の内容の再確認を兼ねて学ばせています。

生徒・学生への金融教育の重要性が増している要因の一つに、奨学金の問題があります。貸与型の奨学金は教育ローンであり、奨学金の貸与を受けると、借金を背負って社会人生活をスタートし、長期間かけて返済していくことになります。高等学校で進路相談に応じる際には、生徒の夢を潰さないようにしながら、奨学金は借金であることをきちんと伝えていただく必要があります。また、大学卒業後に延滞すると、住宅ローンが組めなくなるなどのデメリットが生じることもあるため、継続的に返済していくための力を身につけさせなければならないと考えています。

近年、日本の消費者行政が大転換を遂げました。2004年の消費者基本法では、消費者は学ぶべき存在、保護ではなく自立支援の対象とされ、2009年の国民生活白書では消費者市民社会の担い手と位置づけられました。消費者市民社会で求められる、環境等にも配慮しながら自らの生活・家計を決定していく消費者像は、これまで家庭科教育を通じて教えられてきた内容そのものです。

このような消費者行政の転換のプロセスにおいて、私も消費者教育推進委員会委員として海外の訪問調査に参加しました。フィンランドでは、「北欧消費者教育戦略文書」が同国の消費者庁と国家教育委員会およびヘルシンキ大学の3名の専門家のみによって実質的に作成されたこと、韓国では、モデル校に指定された小学校で学年に応じた実際的な経済教育が行われていることなどが印象的でした。

あるべき消費者像の具体的な姿として、青森県五所川原市の女性を紹介します。この方は、75歳で起業し、87歳になる今でも、自分で作った笹餅を地元の鉄道の車内で販売し、地域と自分を元気にしています。東日本大震災後には、毎年1,000個の笹餅を被災地に送りました。消費者市民、金融教育という言葉では抽象的で伝わりにくいことがありますが、この女性の姿を紹介すると、自分で意思決定して自分の生活を創っていく、地域や社会を元気にするために自分が動くというあり方を、具体的に理解してもらうことができると思います。

これであなたもひとり立ち~自立のためのWORKBOOK~
これであなたもひとり立ち~自立のためのWORKBOOK~【指導書】

講義の模様(2)

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