所得税アラカルト
8. 退職金や年金にかかる税金
勤続30年の人の退職金については1,500万円までは所得税も住民税もかかりません。
退職金と年金は老後の生活設計に欠かせない大切な柱ですが、高齢社会を支えるために応分の負担が求められています。
退職金と税金
退職金にかかる税金は、長年の功労に報いるために他の所得より優遇されており、分離課税となっており、他の所得とは切り離して計算します。
その計算は、収入金額から勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引き、残りの金額の2分の1に対して税率を掛けて計算します。退職所得控除額の計算に当たって、勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。また、退職所得控除額の最低額は80万円です。
例えば、勤続30年で2,000万円の退職金を受け取った場合には、2,000万円から退職所得控除額の1,500万円を差し引き、残りの500万円を2分の1にした250万円に対して税率を掛けます。
住民税は通常の場合、その年の所得に対して翌年納めますが、退職金の住民税は現年課税といって、退職金を受け取ったとき、退職金から差し引いて、その年に納める仕組みになっています。
障害者になったことを直接の原因として退職した場合には、通常の退職所得控除額にさらに100万円が上積みされます。
万一、死亡によって退職した場合、死亡退職金には所得税も住民税も課税されず、相続税の対象となり、法定相続人一人につき500万円が非課税となります。
退職所得にかかる所得税と住民税は、退職のとき「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、支給額から税金を差し引いて支給されます。申告書の提出がないと、20.42%の税率で所得税がかかり、過不足は確定申告によって精算しなければなりません。
勤続年数(注) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
20年超 | 70万円×(勤続年数-20年)+800万円 |
- (注)
- 勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げ。
年金と税金
国民年金、厚生年金、共済年金等の社会保険制度に基づく公的年金を受け取る場合には、収入金額から下記のように受給者の年齢と年金の収入金額とに応じた公的年金等控除額を差し引いて計算します。
生命保険会社等の任意加入の個人年金の場合には、収入金額から既に支払った掛金や保険料の総額を必要経費として差し引き、残りの金額に税金がかかります。
年金収入区分 | 公的年金等控除額 |
---|---|
110万円以下 | (所得金額はゼロとなります。) |
110万円超330万円未満 | 110万円 |
330万円以上410万円未満 | 年金収入×25%+27.5万円 |
410万円以上770万円未満 | 年金収入×15%+68.5万円 |
770万円以上1,000万円未満 | 年金収入×5%+148.5万円 |
(年齢65歳未満の人)
年金収入区分 | 公的年金等控除額 |
---|---|
60万円以下 | (所得金額はゼロとなります。) |
60万円超130万円未満 | 60万円 |
130万円以上410万円未満 | 年金収入×25%+27.5万円 |
410万円以上770万円未満 | 年金収入×15%+68.5万円 |
770万円以上1,000万円未満 | 年金収入×5%+145.5万円 |
公的年金の源泉徴収
公的年金が支払われる際は、原則として収入金額から上記の控除額を差し引いた額に所得税5%および復興特別所得税0.105%の税率をかけた金額が源泉徴収されます。