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はじめての金融教育-ワークシート付き入門ガイドと実践事例集-

1.金融教育入門ガイド

(5)金融教育Q&A

以下では、金融教育に取り組む上で、学校の先生方が疑問に思われることの多い点について、解説します。

問1.金融教育とはそもそも何ですか。

答1.

金融教育というと、お金儲けをするための教育、株式投資の学習のように思われる方があるかもしれませんが、そうではありません。金融教育は、「お金や金融の様々なはたらきを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」(『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』P.10)です。自立した消費者として健全な社会生活を営むことができるようになるために必要な、金銭や金融経済の知識を身につけるための教育です。その主な内容は本書「はじめに」(P.4)にも記載しましたが、より詳しい内容については、『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』をご覧ください。なお、同書の内容は、金融広報中央委員会ホームページに掲載しているほか、都道府県金融広報委員会または金融広報中央委員会にご連絡いただければ同書をお送りしますので、学校における金融教育にお役立てください。

(注)2016年2月に『金融教育プログラム』(2007年2月発行)を全面改訂しました。

問2.金融教育と学習指導要領との関係はどうなっているのですか。

答2.

学習指導要領には、「金融教育」という言葉こそ載っていませんが、「金融教育」にかかわる内容は多くの教科等に含まれています。平成10年度改訂の学習指導要領における金融教育にかかわる内容については、『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』P.22~31に掲載しています。具体的には、小学校、中学校、高等学校の各学校段階において、社会、生活、公民、家庭、技術・家庭(家庭分野)、特別活動、道徳、総合的な学習の時間に金融教育にかかわる内容が多岐に亘り含まれます。さらに、国語、算数、数学、高等学校における専門教育に関する教科(農業、商業、水産、家庭<消費生活>など)にも金融教育にかかわる内容が多岐に亘り含まれます。金融教育の主要な内容を各学校段階のどのような教科等で取り扱うのが効果的なのかについては、『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-活用の手引き』P.6にも掲載しておりますので、ご参照ください。

(注)『金融教育プログラム-活用の手引き』は『金融教育プログラムQ&A』と改称し、WEB版のみの扱いとしました。

なお、平成20年3月に改訂された学習指導要領においては、例えば、小学校社会では、中学年において「『販売』については、商店を取り上げ、販売者の側の工夫を消費者の側の工夫と関連付けて扱うようにすること」とされているほか、第5学年の「食料生産に従事している人々の工夫や努力、生産地と消費地を結ぶ運輸などの働き」および「工業生産に従事している人々の工夫や努力、工業生産を支える貿易や運輸などの働き」にかかわって、「価格や費用について取り扱うものとする」とされています。また、中学校社会では、「市場における価格の決まり方や資源の配分について理解させること。その際、市場における取引が貨幣を通して行われていることに気付かせること」などとされており、小学校社会、家庭、中学校社会、技術・家庭(家庭的分野)を中心に、金融教育にかかわる内容が平成10年度改訂の学習指導要領に比べ拡充されています。

また、平成21年3月に改訂された高等学校学習指導要領でも、公民の現代社会では「『金融』については、金融制度や資金の流れの変化などにも触れること」、家庭基礎では「生涯を見通した生活における経済の管理や計画について考えることができるようにする」など、新たに記載されています。

問 3. 金融教育はどのような学校段階、教科等で行うことが望ましいのですか。

答 3.

小さい子どもにもお金との接点があることを考えれば、金融教育は、早い段階すなわち幼稚園から始めることが適当であると考えています。また、基本的には、どの学校段階のどの教科でも実践することができると考えています。実際に、幼稚園から高等学校までの様々な教科等での豊富な実践事例があり、金融広報中央委員会でも『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』や『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』などに掲載しています。

一方、小学校の低・中・高学年、中学校、高等学校の各段階でどのような内容をどのような順序で学習すれば、金融経済に関する知識や考える力が理想的な形で身につくのかということは、計画的に金融教育を進めていく上で非常に重要な課題です。この点について金融広報中央委員会では、専門家の協力のもとで整理し、『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』(P.30~33)に「年齢層別の金融教育内容」として掲載しています。

(注)2016年2月に『金融教育プログラム』(2007年2月発行)を全面改訂しました。
本全面改訂版では、「年齢層別の金融教育内容」を改訂し「学校における金融教育の年齢層別目標」として所載。

『金融教育プログラム(全面改訂版)』「学校における金融教育の年齢層別目標」

問 4.金融教育の教材にはどのようなものがあるのですか。

答 4.

金融教育を進めるための教材について、子どもの日常生活から素材を取り上げることが一般的です。そうした事例をもとに、金融広報中央委員会では、様々な教材を発刊し、無償で提供しています。中には、教師用指導書を併せて発行しているものもあります。お住まいの都道府県の金融広報委員会にご遠慮なくご請求ください。

< 小学生向け>
『100 万円あったら、どうする?』、『おこづかいきろく(こづかい帳)』などの冊子のほか、「ボクの犬小屋日記」などのビデオ教材もあります。また、金融広報中央委員会ホームページに掲載しているインターネット教材「おかねのね」は、小学校低学年から高学年までの各年齢層の子どもたちが保護者などと一緒にご覧いただくのに適した内容となっていますので、併せてご活用ください。

< 中学生向け>
『10 代のためのマネー入門』のほか、『これであなたもひとり立ち- 自立のためのWORKBOOK -』、『きみはリッチ?-多重債務に陥らないために-』も役に立ちます。なお、『これであなたもひとり立ち』と『きみはリッチ?』については、教師用指導書も作成しています。

< 高等学校生向け>
『きみはリッチ?-多重債務に陥らないために-』、『これであなたもひとり立ち-自立のためのWORKBOOK -』が大変役に立ちます。また、『ビギナーズのためのファイナンス入門』もあります。いずれの教材も長年の実績をもつ学校教育関係者にご執筆いただいたものであり、学校教育現場において広くご利用いただいているものですので、安心してお使いください。

問 5. どのような実践事例や授業プランがあるのですか。

答 5.

本書に掲載している実践事例のほか、『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』に、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の学校種ごとに実践事例が掲載されています。また、『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』にも、指導計画例として、実践を踏まえた詳しい授業プランの内容が掲載されています。金融広報中央委員会のホームページにもこれらの全ページを掲載しており、また、これらの実践において使用された授業用のワークシートもすべてPDF ファイルで掲載していますので、ご活用ください。なお、本書に収録した20の実践事例に紹介されているすべてのワークシートは、上記ホームページに電子ファイルが掲載されていますので、先生方のニーズに合わせて、自由に加工してご利用ください。

問 6. 金融教育の年間指導計画例にはどのようなものがあるのですか。

答 6.

金融教育の研究や実践を行っている全国の研究校の中には、全学年における多くの教科等における金融教育の年間指導計画を作成している学校があります。金融広報中央委員会では、先進的に研究している学校からご報告いただいた優れた年間指導計画例を本書P.187~197 に掲載していますので、是非ご参照ください。

3.金融教育に関する年間指導計画の例

問 7. 実際に金融教育を実践されている先生から話を聞くにはどうしたらよいのですか。

答 7.

金融広報中央委員会や都道府県金融広報委員会では、金融教育を実践している学校の先生方を講師とする「教員のための金融教育セミナー」を開催しています。学校に参加者募集案内を送付するほか、ホームページで募集を行います(参加費無料)ので、奮ってご参加ください。

また、都道府県金融広報委員会では、金融教育研究校や金銭教育研究校の実践報告と意見交換の機会として「金融教育協議会」を開催しています(都道府県によっては、「金銭教育協議会」、あるいは、「金銭・金融教育協議会」として開催しています)。

これらのセミナーおよび金融教育協議会の開催予定については、金融広報中央委員会のホームページ、最寄りの都道府県金融広報委員会の事務局にご遠慮なくお問い合わせください(都道府県金融広報委員会一覧については、本書P.202~203 に掲載しています)。このほか、「金融教育公開授業」でも、開催校の先生による授業実践を公開しているケースがあります。この点についても都道府県金融広報委員会にお尋ねください。

問 8. 出前授業の講師を招くにはどうしたらよいのですか。

答 8.

各都道府県の金融広報委員会では、市民向け講座や学校等への出前授業の講師として、同委員会事務局員のほか「金融広報アドバイザー」を派遣しています(講師の交通費や謝礼は都道府県金融広報委員会が負担します)。金融広報アドバイザーは、消費生活相談員、ファイナンシャル・プランナー、税理士、社会保険労務士などのいずれかの資格をもつなど、お金や金融・経済に関する専門知識とともに、市民向け講座などの講師を務めようとする意欲をおもちの方に金融広報中央委員会会長が委嘱しています。

学校で出前授業の講師をご希望の場合は、最寄りの都道府県金融広報委員会にご相談ください(都道府県金融広報委員会の一覧は本書P.202~203 に掲載しています)。また、都道府県金融広報委員会のホームページに、金融広報アドバイザーの専門分野などを掲載している場合もありますので、これらのホームページをご覧ください。

都道府県金融広報委員会一覧

問 9. 実践によっては、地域の方々にご協力いただく必要がありますが、どうしたらよいのですか。

答 9.

児童生徒の保護者や地方公共団体の窓口、町内会などを通して協力を得るケースのほか、地元の商店会や地元企業、金融機関などに直接依頼して協力を得ている学校も少なくありません。最近では、企業の社会的責任(CSR)の観点から、地域の学校に対して協力的な企業や金融機関なども多くなっています。本書や『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』、『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』に掲載されている実践事例を参考にしながら、依頼してみてください。なお、学校外の方々と連携される際には、事前に指導目標のほか、具体的な指導計画について十分に打ち合わせをし、学習のまとめや振り返りを丁寧に行うことが大切なポイントとなります。

問 10. 金融教育の研究校とはどのような制度ですか。

答 10.

金融教育研究校および金銭教育研究校とは、幼児、児童、生徒の発達段階に応じた金銭教育ないし金融教育の研究および実践を支援するために、都道府県金融広報委員会が原則として2年間委嘱する制度です。これらのうち、小学校、中学校、高等学校において金融・経済に対する正しい知識の習得に力点を置くものを「金融教育研究校」、幼稚園、小学校、中学校において金銭や物に対する健全な価値観の涵養に力点を置くものを「金銭教育研究校」として委嘱します。

本書ならびに『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』、『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』を参考にしつつ、独創性の高い研究ならびに実践を行っていただき、研究ならびに実践の報告をしていただきます。詳細については、「金融教育研究校、金銭教育研究校のしおり」をご覧ください。

問 11. 学校としての年間計画がすでに決まっており、金融教育を導入する時間やマンパワーがないのですが、どうしたらよいのですか。

答 11.

金融教育は、通常の教科等の指導の中でも十分に実践可能です。学習指導要領に定められている内容と金融教育の関係を示した資料(『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』P.22~31)や、本書ならびに『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』、『金融教育ガイドブック-学校における実践事例集-』所載の実践事例を参考に、無理なく取り入れることのできる内容をまずは実践してみてください。その上で、来年度以降の実践について、校内における検討や地域との連携を検討するなどして、より本格的にご計画ください。その際の具体的な手順についても、『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』の「4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて」(P.40~59)に詳しく述べられていますので、参考にしてみてください。

(注)2016年2月に『金融教育プログラム』(2007年2月発行)を全面改訂しました。

問 12. 家庭との連携はどうすればよいのですか。

答 12.

日頃から保護者向けのお知らせ(学級通信、学年だよりなど)に金融教育への取り組みを紹介しておくと、家庭における金融教育への関心が高まり、家庭の協力が得やすくなるでしょう。また、保護者会や授業参観の際に、金融教育の内容をテーマとする講演会や授業を行うことや、保護者と生徒がともに参加する学習発表会や討論を行うことも効果的です。

問 13. 金融教育について気軽に相談できる窓口はあるのですか。

答 13.

都道府県金融広報委員会または金融広報中央委員会の事務局にご相談ください。連絡先一覧は、本書P.202~203 のとおりです。これらの事務局では、学校教育の専門家の助言のもと、日頃から金融教育の普及・支援活動を行っており、こうした経験を踏まえて、学校の先生方のご要望にできる限りお応えします。

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